帯状疱疹の怖い合併症 - 心血管疾患のリスクと予防法
【帯状疱疹と心血管疾患の関連性】
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって発症する皮膚疾患です。痛みを伴う発疹が特徴的ですが、最近の研究で、帯状疱疹が心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを高めることがわかってきました。
VZVは血管に炎症を引き起こし、動脈硬化を促進します。また、免疫応答により放出される炎症性サイトカインが、動脈硬化プラークの破裂を引き起こし、血栓ができやすくなります。これらの機序により、帯状疱疹罹患後に心血管イベントのリスクが上昇すると考えられています。
米国の大規模コホート研究では、帯状疱疹発症から1年以内の心筋梗塞リスクが1.35倍に上昇したと報告されています[1]。日本でも同様の関連が示唆されていますが、さらなる研究が必要です。
【帯状疱疹の危険因子と予防法】
帯状疱疹のリスク因子には、高齢、免疫抑制状態、糖尿病、心不全などが知られています。特に50歳以上では発症リスクが高まります。
予防には、50歳以上を対象とした帯状疱疹ワクチンの接種が有効です。ワクチンは発症リスクを50〜70%低下させ、重症化も防ぎます[2]。米国では2017年に新しい帯状疱疹ワクチン(シングリックス)が承認され、既存のワクチンよりさらに高い予防効果が報告されています。日本でも接種が可能です。
【適切な治療の重要性】
帯状疱疹を発症したら、早期の抗ウイルス薬治療が重要です。治療が遅れると、心血管合併症のリスクがさらに高まります。皮膚科や内科を速やかに受診しましょう。
また、慢性疾患のある方は普段から健康管理を心がけることも大切です。ストレス管理、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。
帯状疱疹は痛みを伴う皮膚疾患ですが、ウイルスが引き起こす血管の炎症により、心血管リスクも高めます。50歳を過ぎたら帯状疱疹ワクチンの接種を検討し、発症したら早期受診を。日頃からの健康管理も忘れずに。
参考文献:
[1] Minassian C, et al. PLoS Med. 2015; 12(12): e1001919.
https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1001919
[2] Cunningham AL, et al. N Engl J Med. 2016; 375(11): 1019-1032.
https://doi.org/10.1056/NEJMoa1603800
[3] Vaccines (Basel). 2024 Feb 28;12(3):252.