クレカの「タッチ決済」 なぜ利用率は低いままなのか
Visaのタッチ決済に対応したカードの日本での発行枚数が、3月末に1億枚に達したことが発表されました。
その一方で、対面決済での利用率は20%未満にとどまるといいます。なぜ利用率は低いままなのか、背景を考察します。
日本での利用率は20%未満?
最近、クレジットカードのタッチ決済への対応が進んでおり、カードの券面やお店のレジで「リップルマーク」を見かける機会が増えています。デビットやプリペイドも同様です。
Visa日本法人によれば、国内での発行枚数は1億枚に達したとのこと。Mastercardなど他のブランドもタッチ決済を推進していることから、さらに多くのカードが普及していると考えられます。
ただ、国内での決済端末は180万台を突破したものの、日本の対面決済における利用率は20%未満としています。海外ではすでに約6割がタッチ決済とのことから、日本は遅れているといえそうです。
もちろん、日本ではSuicaやPayPayなど別の支払い手段が広く使われていることから、クレカのタッチ決済の利用率が低いことが、ただちに問題となるわけではありません。
また、以前に比べれば利用が増えていることもたしかで、カード会社によるタッチ決済を対象としたキャンペーンなどもあり、コンビニではすでに2件に1件がタッチ決済になっているといいます。
しかし、タッチ決済に特有の問題として、お店としては対応しているのに、店員さんが理解していないというトラブルがたびたび話題になっています。
タッチ決済を知らない店員さんに理解してもらうのは一苦労です。筆者もそうしたやりとりを何度も経験しており、有人レジで使うのはやや不安を覚えます。
タッチ決済の使い方について、VisaのWebサイトでは「いつもの通り『Visaで!』」と伝えるよう案内しています。ただ、その下には「店舗や端末によっては『Visaをタッチで』とお伝えいただく必要がある」との注釈があります。
Mastercardは、「『レジでクレジット払い』と伝えるだけ」とシンプルで、タッチ決済には特に言及なし。JCBは「『JCBのタッチ決済で』または『JCBで』とお伝えしてから」と、両方の言い方を案内しています。
各社で微妙にニュアンスは異なるものの、比較的新しいお店なら、「クレジットで」と伝えるだけでOKとなる場合が多いようです。
こうしたお店では、決済端末が磁気・IC・タッチ決済のいわゆる「3面待ち」に対応しており、どの方式を使うかは利用者が選べます。
しかし、お店によっては決済端末が「クレジット」と「タッチ決済(NFC PAY)」に分かれているところがあり、この場合は「タッチ決済」を強調する必要があるわけです。
筆者が7〜8年前に初めてタッチ決済を試したころにはこうした端末をよく見かけましたが、古いシステムを更新せずに使い続けているお店が残っていると考えられます。
ネーミングもあまり良いとは思えません。認知度という点では「iD」や「QUICPay」のほうが知られており、筆者もタッチ決済が通じないときは、あきらめてこちらで払ってしまうことがあります。
英語圏での呼び方である「コンタクトレス決済」に比べると、日本では「タッチ決済」のほうが馴染みやすいとは思うものの、同じく「タッチ」して使う電子マネーやiD、QUICPayとの違いが曖昧になっている感があります。
Visa日本法人は、この「NFC PAY」問題について業界内での認識が広まっており、改善の方向にあると説明しています。シンプルに「クレジットで」と伝えるだけで使える場所は広がるか、引き続き注目していきます。
訪日外国人需要にも期待
対面決済では微妙なタッチ決済ですが、セルフレジや自動改札などでは何の問題もなく使うことができます。
訪日外国人などの利用を想定し、交通機関への導入も始まっています。たとえば福岡空港から地下鉄、関西国際空港から南海電鉄に乗るとき、すでにタッチ決済で改札を通れるようになっています。
観光地では、券売機などに外国人観光客が列を作る状況を改善できるだけでなく、観光に使える時間が増えることで、消費につながる効果もあるとVisaは説明しています。
東京では外国人観光客が急増し、中には立ち食い蕎麦やカレースタンドのようにローカルなお店に挑戦する人もいます。ただ、券売機が電子マネーにしか対応していないためか、現金を使っている場面を何度か見かけました。
電子マネーやコード決済によるキャッシュレス化が進んできたこと自体は良い傾向ですが、次のステップとして、世界共通で使えるタッチ決済の普及にも期待したいところです。