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安部柊斗、森下龍矢、瀬古樹、佐藤亮、中村帆高。Jリーグを席巻する明大卒ルーキー。

河治良幸スポーツジャーナリスト
明大同期の活躍を刺激に飛躍を目指す中村帆高 (提供写真:FC TOKYO)

2020年のJリーグは新型コロナウイルスの影響で長い中断期間、リモートマッチ、過密日程の中での5人好体制など、難しいシーズンとなっていますが、そうした環境下でも活躍が目立っているのが大卒ルーキー、特に明治大学の出身選手が軒並みJリーグの各カテゴリーで活躍して、注目を集めています。

これまでも長友佑都を筆頭に、FC東京の室屋成など多くの選手を送り出してきましたが、今年は9人のJリーガーが誕生し、多くの選手がすでに公式戦デビュー、さらに主力として活躍していましす。いろんなタイプの選手がいますが、共通するのは運動量のベースがあること、そして自分の武器とチーム内での役割をうまく整理して、試合ごとにアップデートしているように見えます。

2020シーズンの明大卒ルーキー

J1

MF 安部柊斗(FC東京) 攻守に渡り運動量が豊富なMF。ACLでも活躍

DF 中村帆高(FC東京) 本職は右SBながら左SBでも長足の成長。1対1に強い

MF 瀬古樹(横浜FC) 開幕デビューの神戸戦で衝撃ゴール。再開後も全試合に先発

DF 森下龍矢(サガン鳥栖) 驚異的な上下動と闘志あふれる守備に加えて戦術眼が高い

J2

FW 佐藤亮(ギラヴァンツ北九州) 熱いプレーと積極フィニッシュが武器。琉球戦、岡山戦で連続ゴール

GK 加藤大智(愛媛FC) 未出場も開幕から全試合ベンチ入り

DF 川上優樹(ザスパクサツ群馬) 未出場

DF 小野寺健也(モンテディオ山形) 未出場

J3

MF 中村健人(鹿児島ユナイテッド) 未出場

ここ最近の活躍も一時的なものではなく、シーズンが進むほど活躍ぶりが目立ってきそうです。97年生まれ以降の選手たちであり、1年延長によりU−24に変更された東京五輪でも有力候補になってくる可能性もあります。

その筆頭格がFC東京の安部柊斗です。シーズン開幕前に東慶悟が目を負傷したこともあり、ACLの開幕戦にスタメン出場すると大活躍。2月のJリーグ開幕戦こそ手の負傷で欠場しましたが、中断あけも躍動的な活躍を見せ、直近では2−0で勝利した浦和レッズ戦でも攻守に存在感を示しました。

(提供写真:FC TOKYO)
(提供写真:FC TOKYO)

「北九州の(佐藤)亮であったり、横浜FCの瀬古(樹)、サガン鳥栖の森下(龍矢)も試合に絡んでいる。なおかつ亮は2得点あげているので刺激になりますし、自分も結果出さないとなっていう危機感も芽生えているんですけど、ホントにいい刺激になってます」

7月8日の川崎戦を前にしたオンライン取材でこう答えていた安部は同じ中盤の主力であった橋本拳人のロシアリーグ(ロストフ)移籍に関しても「拳人君が移籍することになって、チームとして痛いですけど、そこは自分が拳人君を補う以上のプレーをすれば全く問題ないと思う。自分が東京を勝たせられるように、安心してサポに見ていただけるようなプレーをしていきたい」と語っていました。

同じFC東京でプレーする中村帆高も成長が目覚ましい選手です。「一番近くでは安部柊斗がチームの中心になって、成功しているのを目の前で見ていて、シンプルに素直に嬉しいし、その一方、裏側で悔しい思いもあるし、本当に刺激をもらえてる」という中村は「他のチームでは横浜FCの瀬古樹や鳥栖の森下龍矢、ギラヴァンツの佐藤亮だったり、毎試合、毎試合、試合に出て結果を残している選手がいる」と語ります。

(提供写真:FC TOKYO)
(提供写真:FC TOKYO)

「それは今も変わらず刺激になってますし、でも自分は自分、他人は他人なので、いい刺激にしながらも比べることなく、自分らしくやっていきたいなって思っていますね」

清水エスパルス戦とのリーグ開幕戦は左サイドバックで起用され、3−1の逆転勝利に貢献。柏レイソルとの再開初戦こそ出番はなかったものの、川崎フロンターレ戦と横浜F・マリノス戦に先発しました。

川崎戦にレギュラーの室屋成に代わり、もともと本職の右サイドバックで出場した中村はチーム全体が後手に回る展開で自分のサイドでも何度も破らると、前半だけで4失点。ハーフタイムに室屋と交代させられました。

「フロンターレ戦は自分がああいうプレーをしてしまって、でも(室屋)成くんが出た後半は良くなった。健太さん(長谷川健太監督)には本当に感謝しかなくて、あそこで外されてもおかしくない試合。それでも自分を信頼して使ってくれた」

その言葉通り、左サイドバックでスタメン出場した横浜F・マリノス戦では「自分の持ち味は守備の対人、寄せるスピード、運動量を生かしたプレー」という意識を数日間でも見つめ直し「まだまだ甘さはありますけど、手応えは出てきた」というプレーで3−1の勝利に貢献しました。

「ずっと自分は就活をしてまして、大学の4年には内定をいただいていて、本当なら住宅の販売をしていた」と振り返る中村。実はサガン鳥栖で活躍する森下龍矢も大企業が内定していた選手で、そうした境遇からプロ入りし、J1の舞台で活躍するというのは興味深いところです。

明大からは佐藤瑶大(ガンバ大阪内定)や常本佳吾(鹿島アントラーズ内定)など2021年以降の内定が決まり、今後さらなる注目を集めて行きそうです。

そのほかにも大卒ルーキーでは駒沢大卒の星キョーワァン(横浜FC)や専修大卒の西村慧祐(大宮アルディージャ)、法政大卒の紺野和也(FC東京)などの活躍が目を引きます。U-23日本代表でもある大阪体育大卒の田中駿汰(北海道コンサドーレ札幌)や筑波大卒の三笘薫(川崎フロンターレ)なども存在感を高めており、法政大に在学中ながら鹿島アントラーズ加入2年目となる上田綺世も横浜F・マリノス戦でチームを初勝利に導く2ゴールを挙げ、ようやくトンネルを抜けた感もあります。

今シーズン、さらなる大卒ルーキーの活躍、さらには特別指定選手などの台頭に期待です。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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