米国の携帯電話マナー事情を探る
日常生活に深く浸透した携帯電話。既存の日常生活に割り込む形での利用スタイルは、時にトラブルや不快感のきっかけとなることも。先を行く米国における携帯電話マナーの認識の実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年8月に発表した報告書「Americans’ Views on Mobile Etiquette」を元に、探ることにする。
携帯電話(従来型とスマートフォン双方)は高機動性を有する情報端末。次のグラフは日常生活の上で、その携帯電話用いて、列挙した行為をしているか否かを尋ねたもの。携帯電話所有者限定の設問なので、見方を変えれば「携帯電話を公共の場でどれほど高頻度で活用しているか」の確認でもある。
出先に足を運ぶ時の目的地に関する詳細や道のりの確認など、ナビゲーション的利用を行う人は2/3程度。頻繁に行う人は1/3にも及ぶ。他人との待ち合わせの調整もほぼ同率で7割。家族や友達への現状報告(生存証明のようなもの。あるいは現状確認)もほぼ同率で7割近く。
他方、何か特定の事柄をしている際に、他の必要な作業を手掛けるとの人は5割程度。また、いわゆる手持無沙汰な状態で、何となくブラウジングをしたりソーシャルメディアを巡回したり、ゲームアプリで暇つぶしをするなどの行為は5割程度。
携帯電話でこれから会う人の情報取得をする人は1/3強。事前調査を怠ったのか、あるいは突然の必要が生じて足を運ぶ過程で調べる必要が生じたのか。いずれにしてもさほど多くは無い。
今件調査項目の中でもっとも行動頻度が低いのは、そばに居る人との会話の最中に、何らかの形で携帯電話を操作し、その会話をさえぎる行為。これは2割程度で、よくある人は6%でしかない。しかし見方を変えれば、6%もの人がしばしば他人との会話中でも携帯電話の操作で会話をさえぎり、16%の人は時々そのような行為をしてしまうことになる。日本と比べて多いか少ないか、微妙なところ。
従来型携帯電話よりもスマートフォンの方が高機能で利用頻度が高くなるサービスが多く、熱中度が上になることから、電源を切る機会が少なく、持ち歩く頻度も高い。「公共の場での操作様式」でも同じように、従来型携帯電話よりもスマートフォンの方が、各行動の実態率は上となる。
項目のうちいくつかは、従来型携帯電話では不可能、あるいは難儀する場合が多く、スマートフォン利用者で無いと十分な結果を期待できないものもある。例えば「目的地や道のりの情報検索」の場合、地図による案内誘導を従来型携帯電話(アメリカの場合は多分にシンプルなフィーチャーフォンで、日本のようなマルチメディアフォンでは無い)で行うのは難しい。逆に「家族や友達への現状報告」は、SMSでも十分可能なため、スマートフォンと従来型携帯電話との差異はあまり無い。
スマートフォンは便利さの上では従来型携帯電話と比べ、はるかに機能が向上している。それゆえに、公共の場でもその機能を活かして便利さを享受する行為の機会は増えることになる。しかしそれは同時に、これまでとは異なる状況が生まれる可能性も秘めている。「そばに居る人との会話をさえぎる」の増加が好例で、これが許容されるか否か、社会通念の変化と合わせ、注目しなければなるまい。
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