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コロナワクチン インドでは来春、民間でも販売へ

小林恭子ジャーナリスト
コロナワクチンがまもなく接種開始へ(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスのワクチン接種が、英国で今週から開始される。

 今回のワクチンは米ファイザーとドイツのビオンテックが開発したものになるが、これに続く予定の他のコロナワクチンも国が同様に注文しており、国営の国民医療サービス(NHS)を通じて接種が行われる。利用者からすると、無料で接種を受けられる。当初はケア施設にいる入所者やケア職員、高齢者が対象となる。

 民間市場には出さないことになっているため、高額を出しても真っ先にワクチンを受けたいという人の道は閉ざされている状態だ。

 一方、ワクチン生産では世界最大手セラム・インスティチュート・オブ・インディアを抱えるインドでは、来春にも一部が民間市場に出るという。英フィナンシャル・タイムズ紙(12月6日付)が報じている。

 現在、セラムは英製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したコロナワクチンを生産しており、これまでに4000万回分の生産を終えている。

 医薬当局がこのワクチンを認可次第、セラムはまずインド政府に供給した後、2000万回から3000万回分を民間市場に出す予定だという。セラムの最高経営責任者アダー・プーナワラ氏がフィナンシャル・タイムズ紙に語っている。時期は来年3月あるいは4月頃になりそうだ。

 英国では、米ファイザーがしばらくの間は民間市場にコロナワクチンを出す予定がないことをすでに明らかにしている。

 一方、セラムの場合のように各製薬会社・ワクチン開発企業が該当国の医薬当局から認可を得た後、製品を民間市場に出していくのであれば、それぞれの政府による流通とは別のワクチン入手法が出てくることになる。

 アストラゼネカのコロナワクチンは、インドでは民間企業に1回分で8ドル相当(約800円)で販売される見込み(セラムのプーナワラ氏)。インド政府には1回分3ドルで販売する。来年1月頃に接種開始と見られている。

 インド政府は来年7月までに3億回分のコロナワクチンが必要となることを表明している。

 人口14億人を抱えるインドでは、感染者が968 万人、回復者が914万人、死者が14万1000人(7日時点)となっている。

 

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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