「きのこの山」ヘッドホンのパクリ商品の販売者はどのようなペナルティを受けることになるか?
「明治、”きのこの山 ワイヤレスイヤホン”類似品に注意喚起 ”まだ販売を開始しておりません”」というニュースがありました。株式会社明治が、ファンの声に応えて、有名商品「きのこの山」の形状のワイヤレスイヤホンを3月下旬に販売する予定を発表したところ、早くも市場にパクリ商品が登場したので明治が注意喚起しているというお話です。
これらのパクリ商品に明治がどのように権利行使できるかを考えてみます。まず、「きのこの山」という名称(文字商標)ですが、商標登録5994108号で9類「電子応用機械器具及びその部品」「電気通信機械器具」を押さえているので商標権を行使可能です。
では、「きのこの山」の名称を使わないで、形状だけを真似た場合(たとえば、「例のチョコのイヤホン」と銘打つなど)はどうなるでしょうか?「きのこの山」の形状が立体商標登録(登録6031305号)されていることは有名と思います。しかし、この登録の指定商品は30類「チョコレート菓子」のみです。したがって、この立体商標の権利で直接的に「イヤホン」での使用に対して権利行使することはできません。そもそも、立体商標登録の前提として消費者の認知度がきわめて高いことが求められますので、「チョコレート菓子」以外の指定商品で登録することはもとより不可能でした。
しかし、「きのこの山」の形状は相当に有名ですので、不正競争防止法で権利行使できる可能性は十分にあります。不正競争防止法は指定商品や区分といった概念には縛られずに権利行使できます。周知性・著名性の立証が必要ですが、ここで、先述の立体商標登録されていることが根拠の一つとして使えます。立体商標登録は直接的には使えませんが、間接的には使えるということになります。「きのこの山」の形状が周知であると認められ、かつ、消費者が明治の商品と混同していることを立証できれば不正競争防止法により権利行使できます。また、著名(周知よりもさらに有名度が高い)と認められれば、混同を立証するまでもなく権利行使できます。「著名」というとたとえばスーパーマリオのレベルの有名度です。個人的には、「きのこの山」の形状が「著名」とされてもおかしくはないと思います。
商標法も不正競争防止法も権利行使により差止めや損害賠償請求が可能ですが、条件によっては刑事罰の対象にもなります。商標法は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、不正競争防止法は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金ということで結構ヘビーなペナルティです。明治がわざわざプレスリリースを出したということは強硬な姿勢を取ることも予測されますので、パクリ行為に関与するのはジョークではすまなくなる可能性もあるでしょう。