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【解説】古谷徹の「名探偵コナン」安室透役降板 衝撃も想定内の結末

河村鳴紘サブカル専門ライター
(写真:つのだよしお/アフロ)

 声優の古谷徹さんが、人気アニメ「名探偵コナン」の安室透役、また「ワンピース」のサボ役を降板することが発表され、アニメファンに衝撃が走っています。しかし関係者の中には、発表前から古谷さん降板の可能性を指摘する人もいました。昨今は、法や社会的なルールの順守が厳しく言われる時代。ゆえに衝撃ではありながらも、想定内の結末と言えるのではないでしょうか。

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 古谷さんは、5歳で劇団に入り、子役としてドラマに出演。中学生で声優デビューを果たし、その後アニメ「巨人の星」の主人公・星飛雄馬役で名を知られるようになります。大学卒業後に芸能界に復帰し、「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイ役や「聖闘士星矢」の星矢役、「美少女戦士セーラームーン」のタキシード仮面役などを演じ、レジェンド的な存在です。そして最も新しい「当たり役」といえば、何といっても「名探偵コナン」の安室透役で、女性に絶大な人気がありました。

 取材者側の視点でいえば、古谷さんはこちらの意図をくみ取り、見出しになる言葉を発してくれるなど、サービス精神も満点でした。かつてインタビューをしたときも見出しを取るのに多すぎて困るぐらい。頭の回転も良いのでしょう。

 降板の理由について、古谷徹さんから申し出があったもので「諸般の事情」とありますが、誰の目にも明らかです。古谷さんは5月、週刊文春・文春オンラインに37歳年下女性との不倫を報じられました。古谷さんも、4年半にわたる不倫関係を認める形で謝罪。記事には、女性への暴力や妊娠中絶にも触れられており、さらに不倫相手に安室透の声でささやいていたことを「キャラの私物化」と表現されて、ネットで強烈な批判にさらされました。

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 その後、ゲーム会社のアトラスが、新作ゲーム「メタファー:リファンタジオ」に起用予定だった古谷さんのキャスト変更を発表していました。こちらも理由は「諸般の事情」とにごされたものの、やはり誰の目にも明らかです。ですが新規コンテンツと、長年にわたって展開された国民的人気コンテンツでは、降板の意味合いがまるで違います。

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 声優のトラブルを巡って、「降板の可能性」がイジられるのは、ネガティブワードがバズる特性のあるSNS,ネットニュースの特性です。可能性はあっても、正式発表されたときに思うのは、「え!」という人が大多数でしょう。

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 しかし近年でいえば、人気声優の櫻井孝宏さんや鈴木達央さんも不倫が報じられ、相当なバッシングを受けました。そして降板が発表された作品もあるわけです。人気声優の当たり役でも「不祥事→降板」という“慣例”が着々と積み上げられています。

 不倫騒動を受けて、ファンから強烈なクレームが関係会社に殺到し、あらがうことが難しい決断に至ったのは推察が付きます。並みの人気作ならいざしらず、「名探偵コナン」は今や興収100億円を稼ぐ、日本を代表する超ドル箱のスーパーコンテンツの一つ。現状維持では、不倫に関連付けてネットでネタにされ続けるでしょう。交代をするなら早いほうがダメージが軽くて済み、(悲しいことですが)数年がたてば話題にならないのも、また「あるある」なのです。

 不倫が報じられた時点で、業界関係者らに取材をしたとき、「古谷さんの降板」の可能性を口にした人は複数いました。理由は「優先して守るべきはコンテンツだから」で、まさに正論です。

 また古谷さんの70歳という年齢も、降板決断の“追い風”になったのではないでしょうか。長寿アニメの宿命ですが、年齢による声優の交代は避けられません。もちろん、望まぬ“前倒し”ではあるでしょうが……。

 近年は声優の人気が高まっていますが、色恋沙汰の話が写真週刊誌のターゲットにされているのに、次々と起きてしまう。誰にとっても痛い話です。そして声優や芸能人にトラブルが出ると、頭に浮かぶのはAIの活用でしょうか。

 先日「ファッションセンターしまむら」が、AIモデルを起用したことが話題になりました。記事の見出しにもある通り、スキャンダルの可能性を排除できるのは、アニメ関係者にとって魅力でしょう。ただし声優はもちろんファンの反発は確実で、かつ声優の技術が現時点で代替できるとはとは思えません。ただし「不可能」「ありえない」ことが技術の進歩・画期的な手法で覆され続け、現代社会が成り立っているのも、また事実です。

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 ともあれ声優を起用する基準の一つに、今後はスキャンダルへの意識、コンプライアンスの順守がより求められて、そのウエートが格段に重みを増すであろうこと。それは間違いなさそうです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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