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パキスタン軍、同国製の携帯式防空ミサイルシステム「Anza Mark-II」ウクライナ軍供給

佐藤仁学術研究員・著述家
(TWC提供)

2023年4月にパキスタン製の携帯式防空ミサイルシステム(man-portable air-defense systems:MANPADS)「Anza Mark-II」がパキスタン空軍からポーランドを経由してウクライナ軍に供給されるとインドのメディアThe Economic Timesが報じていた。

このようなタイプの携帯式防空ミサイルシステムは欧米各国などからも多くウクライナ軍に供給されている。「Anza Mark-II」は短距離に強い地対空ミサイルである。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ロシア軍はロシア製の監視ドローン「Orlan-10」やイラン製軍事ドローン「シャヘド」、ロシア製軍事ドローン「Lancet」を主に使用してウクライナを攻撃している。

「Anza Mark-II」のような携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)はこのような上空のドローンを迎撃して破壊するのに適している。

ドローン以外にもヘリコプターやミサイル、戦闘機などの迎撃に適しているが、破壊しているもののほとんどがドローンである。ウクライナ軍ではロシア軍侵攻直後からロシア軍の破壊状況をカウントしているが、2023年4月末時点でドローンが約2400機、ヘリコプター約290機、誘導ミサイル約910機、戦闘機約300機を破壊している。このように上空を飛行して迎撃して破壊するのはほとんどがドローンである。

携帯式防空ミサイルシステムを手にしたウクライナ兵が草原や塹壕の中、ビルの屋上などからロシア軍のドローンを迎撃して破壊している。またバンやトラックなどの後ろに携帯式防空ミサイルシステムを持ったウクライナ兵が乗った「移動式ドローン迎撃車」はロシア軍が奇襲してくるサイレンが鳴ると、その場所に行って迎撃している。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)は明らかにハードキルの方だ。

攻撃ドローンだけでなく、監視・偵察ドローンも発見したら、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。ロシア軍が使用している監視ドローン「Orlan-10」や民生品ドローンのような安価な偵察ドローンに対してこのような地対空ミサイルシステムで迎撃して破壊するのはコストパフォーマンスが低い。

だが偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止させたりする必要がある。また回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。ロシア軍に対しての迎撃能力誇示による抑止にもなる。

毎日のようにロシア軍もウクライナ軍も監視・偵察ドローンや攻撃ドローンを飛行させて監視や攻撃を行っている。安価に調達できるので迎撃されても次から次へとドローンが最前線に供給されている。そのため携帯式防空ミサイルシステムも何台あっても足りない。

▼パキスタン製の携帯式防空ミサイルシステム「Anza Mark-II」

▼ウクライナ軍によるロシア軍の破壊状況

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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