【戦時の献立】コーヒー豆を使わない『榮養コーヒー』戦時下の代用品レシピ(昭和14年12月3日)
「もし戦時中に料理ブログがあったら?」
今日の献立は、昭和14年12月号の主婦之友から「榮養コーヒー」です。(※記事の最後には動画もあります。そちらもお楽しみください)
泥沼化し、終わりの見えない日中戦争の最中。一般国民はお国のために物資を節約するよう、強く求められていいました。
当時の婦人雑誌ではさまざまな「代用品を使った献立」が紹介されています。例えば、卵の代わりに豆乳を使った茶碗蒸しや、肉の代わりにイワシを使ったシュウマイなど。
今回の「榮養コーヒー」は、コーヒー豆を使わずにコーヒー(のような飲み物)を作るわけですが、コーヒーよりも栄養価が高いことや子供も安心して飲めるとアピールしています。
誌面にはこう書かれています。
興奮剤とはカフェインのことでしょう。当時すでに、子供がカフェインを摂取するのは不安視されていたことがうかがえます。
昭和14年12月頃の主な出来事は?
- 12月15日:アメリカで映画「風と共に去りぬ」公開
- 12月1日:米穀搗精等制限令(べいこくとうせいとう せいげんれい)施行。いわゆる白米禁止令で、米の精米は七分づきまでと制限された。
長引く日中戦争のため日本では食料統制が始まる頃、あの「風と共に去りぬ」が公開されていたとは個人的にはとても驚きました。
では、ここから先は昭和14年12月3日だと思ってご覧ください
昭和14年12月3日、日曜日。快晴。
しかし夜は途端に冷え込んだ。
何か温かいものをと家内が言うので、榮養コーヒーを作る。榮養コーヒーとは、つまりは代用コーヒーである。
最近、家内の婦人雑誌は代用品で話が持ちきりだ。
今月から白米が禁止になったとはいえ、コーヒーまで代用というのは、いささか話が飛躍しすぎではないか。
何より子供にとってはかわいそうな話である。この間、ヨシコが遊びにきた時、姪たちは私が作ったお子様ランチを嬉しそうに満面の笑みで食べていた。
何もかも代用となれば、あの笑顔はどうなってしまうのか。
さぁ、榮養コーヒーをこしらえよう
【材料】
・からす麦(オーツ麦) ・黒豆
材料はからす麦と黒豆の二つのみ。
献立には詳しい分量が載っていないが、黒豆1にからす麦3の割合で使う。
これを少し黒めに良く炒る。
炒ったら、あとは煎じれば良いようである。
しかし、煎じろと簡単に言われても良くわからないから、家内に聞いてみる。どうやら、薬を煎じる場合はだいたい水が半量になるまで煮るのだという。
代用品のくせに、本当のコーヒーよりも滅法界手間がかかるとはどういう了見か、などと思う。
榮養コーヒーの完成なり
ただひたすら苦い!
飲んでみると、香りはお茶に似ている。
深い苦味はコーヒーに通じるものがあるが、酸味が皆無である。
二口、三口と飲み進めていくうちに、その苦味に面食らってしまい、カップを口に運ぶ手が止まる。
これは率直に言ってやれない。コーヒーとは似て非なるものなり。
しかしコーヒーが手に入らなくなれば、これも有難いのかもしれん。
家内は無類のコーヒー好きであるが、あまりの苦さに顔をしかめていた。当分は作らんで良いとのこと。
もっと水をたくさん使って煮出せばよかったのだろうか…
ごちそうさま。今度はうまいものを作ろうと思う。
「戦時の献立」とは?
日中戦争から太平洋戦争の“戦時中”と言われる時期も、婦人倶楽部、婦人之友、主婦之友といった婦人雑誌は休刊することなく発行され続けた。
そこに掲載されたレシピを、できる限り忠実に調理。
作るのは、暇な日曜日に夕めしを作ることにした「私」。
ちょうどその当時に起きた出来事や、「私」の些細な日常を交えながら、戦争中の食事について深掘りする。
動画も見ていただけると有り難し!
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