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「眼前で連れ去られ驚愕」北朝鮮軍幹部、女性50人に鬼畜行為

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

 国連北朝鮮人権状況特別報告者のエリザベス・サルモン氏は26日、ニューヨークの国連本部で開かれた第77回国連総会第3委員会の会議で、自らの任期中に、北朝鮮女性と少女の人権情報を重点的に扱うと明らかにした。

 サルモン氏は「(北朝鮮の)人道に対する罪を含め、人権蹂躙の責任を負う者がいない現状を考慮し、犠牲者のために真実と正義を確保する効果的な案を求める」と述べた。また、前任者のトマス・オヘア・キンタナ氏とは異なるアプローチを取るとも述べた。

 同氏はさらに、「北朝鮮は(国連人権理事会の)UPR(普遍的定期的審査)で指摘された262件の人権改善勧告案のうち、132件を受け入れたが、その多くに女性と少女の人権状況に関するものが含まれている」とし、「北朝鮮の女性と少女は、様々な形の暴力で苦痛を受けているのみならず、経済活動分野でも差別を受け、それにより脱北を試みた女性は性売買などの状況に直面した」とも述べた。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 北朝鮮の金正恩総書記は、国際社会から人権問題で非難されることを最も嫌っている。以前は北朝鮮の国連代表が、会議の席でムキになって反発したこともあった。

 もっとも、最近はその態度に変化も見られる。非核化と関係改善を巡る米トランプ前政権との交渉が決裂し、自由主義国家との新たな関係構築が遠のいたことによる諦めからか、人権を巡る非難を以前ほど気にしていないようにも見えるのだ。

 プーチン政権のロシアや習近平の独裁色が強まる中国などとよろしくやっていく限りにおいては、人権問題はほとんど障害にならない。

 しかし、むしろ北朝鮮国内において、人権は重要なテーマになってきている可能性がある。以前はあまりにも人権の理念が社会から排除されていたため、例えば性的虐待を受けた女性が、それを被害として認識できないといった状況さえあった。

 それが現在では、庶民もそれが犯罪であることをハッキリ認識するようになり、性的虐待が横行する軍に娘を送るまいと、親たちが兵役を忌避させる事例も増えていると言われる。

 また今年7月には、黄海南道(ファンヘナムド)海州(ヘジュ)に本部を置く、朝鮮人民軍第4軍団傘下の師団で政治部長を務めていた40代のキム上佐(中佐と大佐の間の階級)が、約50人もの女性兵士に性的虐待を繰り返していた容疑で逮捕された。

 デイリーNKの内部情報筋によれば、こうしたケースは「以前ならば党的処罰や降格で済まされていただろうが、今回は多くの兵士の目前で、幹部(キム上佐)の手に手錠がはめられて連行され、皆を驚かせた」という。

 軍当局がこのような行動を取ったのは、キム上佐の行為を重大な犯罪として認識していることを示しながら、兵士の人権に配慮していることを強調するためだった可能性がある。そして、日本社会でなら当たり前とも言える逮捕の光景が、北朝鮮の人々にとっては驚愕に値する変化だったということだ。

 北朝鮮当局もすでに、兵士や民間人の人権意識を無視できなくなっているのかもしれない。

 基本的には北朝鮮国外で活動せざるを得ないサルモン報告者だが、彼女が北朝鮮の女性と少女に対する人権情報を集めて分析し、国際社会に発信すれば、それは何らかの形で北朝鮮国内に流入し、たとえわずかではあっても、同国民の意識に影響を及ぼす可能性がある。

 国際社会は今、核開発とミサイル発射の暴走を繰り返す金正恩氏の暴走を、外部から抑え込む術を実質的に持たない。北朝鮮の内部で、大きな政治的変化が起きるまでには相当に長い時間を要するだろうが、だからこそ今の段階から、国連報告者の活動を支援するなどの形で、何らかの変化が起きるよう促していきたいものだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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