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中国で恩人夫婦を毒殺した女はやはり死刑

宮崎紀秀ジャーナリスト
女に一審で死刑判決を言い渡した漳州市中級人民法院(ウエイボー公式アカウントより)

 長年、親代わりになって可愛がってくれた夫婦を毒殺した女への死刑判決は、覆らなかった。殺害された夫婦の実の娘は「これ以上の心の安らぎはない」と、今も消えることはない憤りを吐露した。

 事件そのものは3年近く前、福建省の漳州で起きた。当時、恩を仇で返した女の残忍な犯行が大きな話題となり、この度、二審の判断が下されたことで、中国では再び事件の記憶が蘇っている。 

 警察の発表や中国メディアによると、事件は以下の通り。

 被告の女、林は1982年生まれで離婚歴があった。元々、殺害された夫婦とは、妻との関係が良かった。夫婦には実の娘がいたが、離れて暮らしていた。妻は林について「義理の娘」などと周囲に話しており、2020年6月初めから夫婦の家に一緒に住まわせるようになった。

 ところが、6月13日に妻が病院に運ばれ、翌日死亡。連絡を受けた実の娘は、母親には元々基礎疾患があったので、下痢などが併発症を引き起こしたなどと考えたという。

 その5日後の18日の昼、夫婦の夫(娘からみれば父)とその実の娘が、林の用意した出前の焼き魚を食べると、嘔吐や下痢の症状が出た。娘の症状は重くはなかったが、父の症状は酷く、病院に運ばれた。約半月後、死亡した。

 林がネットで購入した農薬を盛っていたのだった。

 林は夫婦の妻から金を借りていた。林の供述によれば、クレジットカードの支払いの肩代わりなどもしてもらい、事件までに11万元(約215万円)を借りていたという。

 林は逮捕され、2021年10月に一審判決で死刑が言い渡された。

 一審では、夫婦の殺害以外にも、林がウソの投資話で別の人物から159万元(約3100万円)余りを騙し取った罪を認定している。

 福建省の高級人民法院(高裁に相当)は、林の控訴を受けて審理していたが、一審の死刑判決を維持すると判断した。被害者夫婦の実の娘が、2月14日に通知を受けたという。1か月足らずのうちに両親を相次いで失った娘は、その晩、SNSで「これ以上の心の安らぎはない」と記したという。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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