Yahoo!ニュース

広瀬竜王の連覇か、豊島名人のビッグタイトル二冠か―竜王戦七番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
史上4人目の「竜王名人」を目指す豊島将之名人(筆者撮影)

 広瀬章人竜王(32)に豊島将之名人(29)が挑戦する第32期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)は10月11、12日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で第1局が行われる。

 広瀬竜王は昨年の七番勝負でタイトル通算100期の偉業達成がかかる羽生善治竜王(当時)を4勝3敗のフルセットで破り、今期は連覇を目指す。

 挑戦者の豊島名人は今年春に名人を獲得し三冠となったが、棋聖(対渡辺明二冠)、王位(対木村一基九段 ※肩書はいずれも当時)の防衛戦に続けて敗れて現在タイトルは名人のみ。だがタイトル序列1位の竜王を奪取すれば羽生善治九段、谷川浩司九段、森内俊之九段に続く史上4人目の「竜王名人」同時獲得の偉業達成となる。

広瀬竜王わずかに有利か

 実績十分の両者の対決とあって七番勝負は互角の戦いが予想されるが、最近の調子から広瀬竜王がわずかに有利と見る。

<広瀬竜王の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)

3月25日 棋聖戦決勝トーナメント

対中村太地七段 ●

6月14日 順位戦A級

対稲葉陽八段 ●

7月26日 順位戦A級

対久保利明九段 ○

8月26日 順位戦A級

対三浦弘行九段 ○

8月31日 将棋日本シリーズ2回戦

対久保利明九段 ○

9月10日 棋王戦本戦

対都成竜馬五段 ○

9月24日 王将戦リーグ

対糸谷哲郎八段 ○

9月28日 将棋日本シリーズ準決勝

対深浦康市九段 ○

10月3日 王将戦リーグ

対豊島将之名人 ○

10月9日 王将戦リーグ

対三浦弘行九段 ●

<豊島名人の最近10局>

8月23日 竜王戦挑戦者決定戦第2局

対木村一基九段 ●

8月27、28日 王位戦七番勝負第5局

対木村一基九段 ○

9月2日 棋王戦本戦

対村山慈明七段 ●

9月5日 竜王戦挑戦者決定戦第3局

対木村一基九段 ○

9月9、10日 王位戦七番勝負第6局

対木村一基九段 ●

9月18日 王将戦リーグ

対久保利明九段 ○

9月21日 将棋日本シリーズ2回戦

対三浦弘行九段 ●

9月25、26日 王位戦七番勝負第7局

対木村一基九段 ●

10月3日 王将戦リーグ

対広瀬章人竜王 ●

10月7日 王将戦リーグ

対藤井聡太七段 ○

 広瀬竜王は夏前までは対局数も少なく調子が出なかったようだが、7月以降7連勝と本来の力を発揮し初防衛に向け調子を上げてきた。直近の王将戦リーグで豊島名人との直接対決を制したのも大きい。

 ただし七番勝負直前の王将戦リーグで連勝がストップしたのは不安材料だ。

 対照的に豊島名人は4月から名人戦、棋聖戦、王位戦の番勝負を立て続けに戦う過密スケジュールで調子が下降気味だったが、七番勝負直前に注目の藤井七段戦に勝利し踏みとどまった。

戦型は角換わりと相掛かりメーンか

 戦型はこのところのタイトル戦定番となっている相居飛車で本命角換わり、対抗相掛かりといったシリーズが予想される。ただし広瀬竜王が先手番の場合、矢倉を志向することもあるかもしれない。

 一将棋ファンとして筆者は流行の角換わりには食傷気味で、大舞台でさまざまな戦型を見たいというのが本音だが、盤上最善と信じ角換わりを採用するのは勝負師としては当然のことなのかもしれない。

 直接対決は広瀬竜王8勝-豊島名人7勝とほぼ互角。ただし直近は広瀬竜王の4連勝。シリーズ序盤で豊島名人が悪い流れを食い止めることができれば、昨年に続いて最終局までもつれる熱戦が見られそうだ。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

古作登の最近の記事