「暗かった表情が明るく」改善傾向にある北朝鮮の食糧事情
3年半にわたったコロナ鎖国で、非常に厳しい食糧難に追い込まれていた北朝鮮国民。一部地域では餓死者を出し、1990年代の未曾有の飢饉「苦難の行軍」の時ですら続けられていた安全員(警察官)、保衛員(秘密警察)への食糧配給も、遅配や一時中断、または家族分の配給の削減が行われ、全体的に非常に厳しい状況にあることが垣間見えた。
しかし、貿易が再開されたことに加え、収穫も進んだことからコメ価格が下落し、国内のほとんどの地域で食糧事情が改善しつつある。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、咸興(ハムン)など道内各地の市場では、穀物価格が下落傾向にある。
咸興市内の錦糸(クムサ)市場と沙浦(サポ)市場では今月12日の時点で、コメが1キロ4800北朝鮮ウォン(約82円)で売られ、今月初めと比べて500北朝鮮ウォン下落した。また、トウモロコシは1キロ2000北朝鮮ウォン(約34円)で、今月初めと比べて300北朝鮮ウォン(約5.1円)下落した。また、北青(プクチョン)郡の市場でも、それぞれ咸興より100北朝鮮ウォン(約1.7円)安く販売されている。
収穫前の9月中旬には、コメ1キロが7500北朝鮮ウォン(約128円)に達していたことと比べると、かなりの安値となっている。
最近までトウモロコシしか食べられなかった北朝鮮の一般庶民は、コメも混ぜて炊いたトウモロコシ飯や、コメで作った粥を食べられるようになり、見る見るうちに元気になったようだ。
「トウモロコシ飯でも食べられるようになったことから、食べ物の心配で血の気がなく、暗かった人々の顔色が、徐々に明るくなりつつあるようだ。皆、こんな状態が長く続いて、トウモロコシ飯でもいいから腹いっぱい食べて暮らしたいというささやかな願いが一日も早く叶えば良いと言っている」(情報筋)
トウモロコシ価格の下落に伴い、ほとんど姿を消していたポン菓子屋も再び現れた。コロナ不況を生き抜くために、ポン菓子製造機をくず鉄として売ろうとしていたが、買い手がつかなかったという。店を再開した人々は、1日に5000北朝鮮ウォン(約85円)以上儲かるようになり、「機械を売らなくてよかった」とニコニコ顔だという。
まだすべての人が飢えから解放されたというわけではないが、徐々に明るい方向に向かいつつあるのは確かなようだ。あとは、この傾向が続くことを願うばかりだ。