ガザ・G7外相会合は即時停戦を一致して呼び掛ける歴史的使命がある。
■ G7は即時停戦を求めるべき
10月7日から続く、中東ガザと周辺での紛争は、一カ月を経過し、極めて深刻な人道危機をもたらしています。
もちろん、ハマスによるイスラエルへのロケット砲等の攻撃で民間人が殺害されたこと、200人を超す人々を人質としてガザに連行したことは、戦争犯罪ともいえる行為であり、到底許されず、人質は即時無条件で釈放されるべきです。
しかし、これに対するイスラエルの軍事行動は明らかに自衛の範囲を超えた不均衡なもので、既に10000人以上の死者が出たと報じられ、連日のように難民キャンプや医療施設が攻撃され、民間人が犠牲になったとのニュースが流れています。
こうしたなか、11月7日より、G7外相会議が東京で開催され、イスラエル・パレスチナ情勢等を討議し、成果文書を採択する予定とされています。
日本のNGO6団体は昨日、議長国である日本政府に対し、
即時停戦(あわせて国際人道法の保護、人質の早期解放)、人道支援の完全なアクセス確保等をG7を含む国際社会の合意形成の一致点とするために最大限の外交努力と行動をとるよう求めました。
NGOによる外務省への要請文:国際会議における「即時停戦」への働きかけ、メッセージの発信を
国連安保理は、4度にわたり、これほど深刻なガザの紛争に関する態度表明に失敗しています。米国が「イスラエルの自衛権」にこだわって、停戦や戦闘停止を求める安保理決議に拒否権を発動するなどした結果、安保理決議は採択されていません(ロシアなども決議案を出していますが、ウクライナで侵略戦争を継続し、自ら平和を破壊しているロシア提案の決議は当然ながら支持を得ないでしょう)。
国際社会がこの問題で分断し、一致した声を出せないなか、人々の命は刻々と奪われているのです。
このような機能不全と愚行は直ちに終わらせなければなりません。
いま、G7諸国が即時停戦で一致することは、人々のこれ以上の壊滅的な犠牲を防止するために、極めて重要であり、G7諸国は人道的、道徳的、そして歴史的に重大な責任を負っています。
■ ガザの極めて深刻な人権状況
日々報じられる通り、ガザの人権状況は既に壊滅的です。
220万人といわれるガザの住民のうち、既に10000人以上の人が命を奪われたとされます。
イスラエルは2009年、2014年にもガザへの軍事行動で地上戦にも突入し、それぞれ1400人、2000人を上回るガザの人々が命を奪われたとされていますが既にそれをはるかに上回り、軍事行動が終わる気配すらありません。
特に2014年の戦闘については、双方の戦争犯罪の疑いがあるとされ、イスラエル軍の戦争犯罪についての国際刑事裁判所(ICC)の捜査が進められています。
こうしたなか、既に10000人を超える民間人の犠牲を顧みずにイスラエルが軍事行動を継続し、、ガザ市での市街戦に突入しようとしていることは極めて深刻です。
ガザの住民は、100万人以上が家を奪われ、故郷を負われ避難生活を送っています。多くの人が家を破壊され、また、「北部から移動せよ」というイスラエル当局の一方的警告を受け、居場所を失ったのです。
そして、イスラエル当局が従前から続くガザ地域の封鎖(境界をコントロールして人や物資の行き来を制限し、人々の生殺与奪の権利を握っている状況)を強化して、電気や、水道、生きるのに必要な生活物資の搬入も厳しく制限され、人々の命を危機にさらしています。
戦争にもルールがあり、民間人への意図的な殺害、民間施設の攻撃、無差別の攻撃、集団懲罰(自分のやっている行為ではないのに他人を処罰する軍事行動)は、戦争犯罪として最も重い処罰の対象となります。
また、ガザ北部の住民を強制的に移送し、追放することは「人道に対する罪」に該当すると、国連独立専門家は警告しています。
さらに、国連独立専門家は、
すなわち、パレスチナに人々はジェノサイドの深刻な危機に直面していると確信している、と警告しています。
Gaza is ‘running out of time’ UN experts warn, demanding a ceasefire to prevent genocide
国際刑事裁判所に関するローマ規程は、ジェノサイド罪を以下のように定義します(和訳参照)。
国民的、民族的、人種的又は宗教的な集団の全部又は一部に対し、その集団自体を破壊する意図をもって行う次のいずれかの行為をいう。
(a) 当該集団の構成員を殺害すること。
(b) 当該集団の構成員の身体又は精神に重大な害を与えること。
(c) 当該集団の全部又は一部に対し、身体的破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること。
(d) 当該集団内部の出生を妨げることを意図する措置をとること。
(e) 当該集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。
このうち、(a)ないし(c)の危険は確実に迫っていると思えてなりません。
■ 壊滅的な人道危機と人命の犠牲を防止し人々を守る重大な責任
国際社会は第二次世界大戦中のホロコースト、冷戦崩壊後のルワンダのジェノサイドを止められなかったとして深刻な反省の上に立ち、ジェノサイド防止はいかなる国にも求められる責任であると認識されています。
現場で支援にあたる国連機関や状況を監視する国連独立専門家、さらに国連事務総長までもが深刻な危機であると警告を発し、即時停戦を求める中、即時停戦を妨げるいかなる国際社会の動きも、虐殺の共犯と言われかねません。
即時停戦を否定する議論を仮に米国等が行い、G7がこれに耳を傾け、即時停戦を一致することを怠るとすれば、それはこの決定的な瞬間に、壊滅的な人道危機と人命の犠牲を防止し人々を守る、人道に対する重大な責任を放棄したことになります。
日本は、G7外相会合議長国として、即時停戦のための強力なリーダーシップを発揮すべきです。そして、非常任理事国を務める国連安全保障理事会でも同様の合意形成を急がなければなりません。時間は残されておらず、人道危機と民間人の殺害は刻々と進行しています。(了)
参照
<ヒューマンライツ・ナウ 10/15発表声明>
「ガザ:軍事行動の激化と市民に対する攻撃を直ちにやめ、不正義の根源に対処することを求める」声明文(日本語/英語)https://hrn.or.jp/news/24541/
<ヒューマンライツ・ナウ 10/25発表声明>「ガザの民間人を標的としたあらゆる国際法違反を非難する」声明文(英文のみ)https://hrn.or.jp/eng/news/2023/10/25/statement-on-gaza-civilians/
10/20(金) 緊急報告会:国際法からパレスチナ・イスラエル情勢を読み解く
https://www.youtube.com/watch?v=svb6zmog2Qs&feature=youtu.be