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ジャニーズ性加害問題 米国の訴訟への動きが浮き彫りにするものとは #専門家のまとめ

伊藤和子弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長
2023年の会見(写真:REX/アフロ)

ジャニーズ性加害問題を巡り、2023年の会見以降、スマイルアップ社は被害者救済委員会に被害者対応を丸投げしてきました。被害救済スキームの透明性、賠償額や被害者対応などが問題視され、国連ビジネスと人権作業部会からも課題を指摘されてきましたが、十分な説明責任は果たされていません。法を超える救済と言いながら、ブラックボックスになっているのではないか、救われない被害者がいるのではないか、と言う声にも応えず、会見も1年以上開かれません。こうした中、元タレント2名が米国ネバダ州に提訴をしました。

ココがポイント

元所属タレント2人が同社や元幹部らに対し、計3億ドル(約460億円)以上の賠償を求めて米ネバダ州クラーク郡の裁判所に提訴
出典:47News 2024/12/19(木)

ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害を認めた昨年9月以降、被害者側が賠償を求めて提訴したのは初めて
出典:毎日新聞 2024/12/19(木)

エキスパートの補足・見解

訴訟には、いくつかの乗り越えるべき壁があります。まず日本と同様、時効の壁があります。しかし、米国では#Metoo運動以降いくつかの州で、性加害に関する民事時効が撤廃されたり、延長されています。今回のネバダ州の動きは不明ですが、時効の壁を乗り越える司法判断もあり得るでしょう。

また、司法管轄も問題となりますが、性加害行為はネバダ州だったとされ、米国では不法行為地の管轄は広く認められる傾向があります。

こうした壁が仮に突破されれば、証拠開示を経て公判審理に入ります。これまで、透明性が全くない、「被害救済委員会」というスキームで被害者補償が秘密裏に進められてきましたが、全てが開かれた手続で進められることが期待されますし、賠償額は巨額になる可能性があります。

日本では子どもに対する性加害が軽視され、時効の障害や低い賠償額が被害者を苦しめてきました。ジャニーズ問題に象徴される通り、加害者側が設定したスキームに従うか泣き寝入りするしかないのが現状です。

米国の裁判の進捗如何によってはこうした日本の後進的な性加害救済制度との歴然たるギャップが露呈し、日本は抜本的な対応や改革を迫られることになるでしょう。

弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。米国留学後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウを立ち上げ、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。

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