「対中」では日本とは異なる道を歩む韓国 「二枚舌」それとも「バランス」外交?
尖閣問題や台湾問題、加えて中国の人権問題をめぐる日本政府の事実上の北京冬季五輪外交ボイコット表明などで冷却化している日中関係とは裏腹に中韓関係は不変である。
米中の「冷戦」により韓国も少なからぬ余波を受けているが、朴槿恵前政権から引き継がれている「安保は米国」、「経済は中国」重視の韓国の基本路線はこれからも変わることはなさそうだ。
実際に韓国は12月2日に米国との間で双方の国防長官出席の下、米韓安保協議を開催する一方で、3週間後の21日には中国との間で4年半ぶりに外交次官戦略対話を行っていた。
米韓安保協議では「台湾海峡の平和と安全の重要性」を確認する米国寄りの共同声明を発表しながら中韓戦略対話では両国の戦略的協力パートナー関係を「成熟した未来志向の関係」に発展させることに同意していた。
二枚舌なのか、八方美人なのか、それともバランス外交なのか、韓国は米中の間を巧みに渡り歩いているようだ。
中韓外務次官戦略会議は2017年6月に北京で開かれた第8回会議以来、9回目となるが、韓国外交部の発表によると、韓国の崔鍾建(チェ・ジョンゴン)第1次官と中国の樂玉外交部副部長との間で行われた今回の戦略対話では来年の国交樹立30周年を迎えるのに合わせ、両国の戦略的協力パートナー関係を「成熟した未来志向の関係」に発展させることを確認していた。
特に、双方は首脳及び高官会談が両国関係発展に重要であるとの認識を共有し、「コロナ禍」の困難な状況下でも今後も対面、非対面による多様な戦略的疎通を図ること、また文化交流の活性化、原材料の供給、気候変動などの分野で両国の国民が成果を実感できるよう実質的な協力を強化することで意見の一致を見ていた。
韓国側は米国や日本など西側諸国の一部が外交ボイコットを表明した来年2月の北京冬季五輪については18年の平昌冬季五輪、21年の東京夏季五輪、22年の北京冬季五輪と続く北東アジアの五輪リレーの重要性を指摘し、今回の北京冬季五輪が防疫、安全、平和のオリンピックとして成功裏に開催されることを祈願していた。日本のスタンスとは明らかに異なる。
韓国は北京冬季五輪に誰を派遣するのか明らかにしていないが、平昌五輪には中国から党内序列7位の韓正政治局常務委員が出席していることから韓国も閣僚の派遣が検討されている。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席するならば、文在寅大統領の訪中もあり得るが、現状ではその可能性は極めて低いとみられている。
韓国は米中との間で朝鮮半島の完全な非核化実現と恒久的な平和定着という共通目標を再確認し、朝鮮戦争終結宣言を含む朝鮮半島平和プロセスの再稼働のための協力方策について意見交換をし、北朝鮮との対話再開に向け今後、持続的に意思疎通することで足並みを揃えていたが、こと北朝鮮に対しては双方から共通の理解、支持を得ているようでもある。
韓国は今月20日、「第四次産業革命委員会」での講演を台湾のオードリー・タン(唐鳳)政務委員に依頼しておきながら当日朝になってドタキャンする非礼を働いたが、韓国は「中国を取るか、台湾を取るか」の二者択一を迫られた場合、地政学上もまた経済面でも、さらに対北朝鮮関係上、中国を選択することになるのであろう。
ちなみに、韓国の貿易パートナーの1位は断然中国で、台湾は6位である。
実際に、韓国の今年下半期(7-11月)の対中、対台湾貿易額を比較すると、対中は約1億3176万ドル(輸出が約7146万ドル、輸入が約6030万ドル)。これに対して台湾は2328万ドル(輸出が約1307万ドル、輸入が約1021万ドル)である。韓国にとって台湾の比重は中国の6分の1程度なのである。