安倍元首相の相続手続が完了~「子のない夫婦」の遺産分けが難しくなる理由
安倍元首相の相続手続が完了したと報じられました(安倍昭恵夫人は岸・安倍両家と“決別”か…元首相の遺産「相続手続き完了」の気になる中身)。
安倍元首相の遺産は多岐にわたるでしょうから、そのことを考えれば、お亡くなりになってから10カ月で相続手続が完了したことは比較的スムーズに手続きが進んだといえるでしょう。
このように、安倍元首相の相談手続は滞りなく完了したようですが、安倍元首相と昭恵夫人のように子どものいないご夫婦の相続手続は困難になることが多いのが現実です。そこで、今回は「子のない夫婦」の相続手続がなぜ難しくなるのか、そしてその対策は何かについて考えてみたいと思います。
相続関係が複雑になりがち
子のない夫婦の相続は、相続関係が複雑になりがちです。具体的に見てみましょう。
親が生存している場合~親が相続人に入ってくる
子どもがいないご夫婦の場合、亡くなった配偶者(死亡配偶者)の親が生存していると、残された配偶者(生存配偶者)と「死亡配偶者の親」が相続人になります(安倍元首相の相続が当てはまります)。
そして、相続分は生存配偶者が3分の2,死亡配偶者の親が3分の1となりますなお、死亡配偶者の両親(父・母)が生存している場合は、親1人当たりの相続分は3分の1の半分の6分の1となります。
この場合、生存配偶者と死亡配偶者の親(義理の親)の関係が良好ならよいのですが、どちらかというとそうではない場合が多いようです。また、親は自分の子どもが先に亡くなってしまったため深い悲しみの中にいます。そのため、遺産分けの話し合いが暗礁に乗り上げてしまったり遅滞してしまったりする可能性が高くなってしまいます。
親が既に死亡している場合~兄弟姉妹が相続人に入ってくる
また、死亡配偶者の親が2人とも死亡している場合、死亡配偶者に兄弟姉妹がいれば、生存配偶者と「死亡配偶者の兄弟姉妹」が相続人になります。
そして、相続分は生存配偶者が4分の3、死亡配偶者の兄弟姉妹が4分の1となります。なお、死亡配偶者の兄弟姉妹の1人当たりの相続分は頭割りします。
この場合、生存配偶者から見れば「なぜ、義理の兄弟姉妹が相続人に入ってくるのか!?」といった納得できない感情が生じることが多いようです。そのため、遺産分けの話し合いがうまく運べないことがあるようです。
兄弟姉妹の中に死亡している者がいる場合~甥・姪が相続人に入ってくる
さらに、死亡配偶者の親が2人とも死亡していて、死亡配偶者に兄弟姉妹がいて、さらに、兄弟姉妹の中に既に死亡している者がいれば、死亡した兄弟姉妹の子ども、つまり、「死亡配偶者の甥・姪」が相続人になります。このような甥・姪を代襲相続人といいます。代襲相続人は「代襲される者」の相続分を引き継ぎます。
生存配偶者は、甥や姪と遺産分けの話し合いをしなければならなくなります。甥や姪からしてみれば亡くなった叔父や叔母の遺産が転がり込んでくることになります。そのため「笑う相続人」と言われることがあります。生存配偶者からしてみれば「なんで亡くなった夫(妻)の遺産を義理の甥や姪と分け合わなくてはならないの!?」と納得がいかないでしょう。一方、笑う相続人となった甥や姪は「ラッキー!もらうものはもらっておこう」と思うかもしれません。そのため、話し合いが難航する可能性が高くなります。
以上ご紹介したように、子のない夫婦の相続手続は、相続関係が複雑になりがちなため、難航することが多いようです。
遺言を残しておけば、遺産分けの話し合い(遺産分割協議)を経ることなく遺産を生存配偶者に引き継ぐことができます。子のない夫婦の場合、残された配偶者のことを考えて、遺言を残しておくことを検討してみてはいかがでしょうか。