“野党共闘”で敗れた宮本たけし元議員「反対ではなく希望のための共闘を」
大型連休期間中の4月30日午後5時、衆議院第1議員会館1019号室。宮本たけしさんは事務所の撤収作業を進めていた。現職の共産党の衆議院議員だったが、議員の立場をなげうって(立候補に伴い自動失職)4月に行われた大阪12区の補欠選挙にあえて無所属で立候補。野党各党の推薦や支援による事実上の“野党共闘”をめざした。しかし4月21日の投開票の結果、立候補者4人中、最下位の14027票で敗れた。
“野党共闘”の内情はどうだったのか? 今後の戦略につながる成果はあったのか? そして意外な人たちからの応援もあったという。本人に話を聞いた。
“野党共闘”は森友追及から始まった
相澤)当初から「野党共闘をめざす」と話していましたが、その考えはどういうところから生まれましたか?
宮本氏)やはり森友問題追及が野党共闘の新たな境地を開いたね。
この問題は野党がみんなで取り組まないと追及できない。党派的判断をせず、共産党が入手した資料もぜんぶ他党に渡しました。みんな大喜びで情報共有したんです。こういう垣根をとったのは森友追及が初めて。(政府に対する)野党合同ヒアリングでも一緒にやってきた。だから私が立候補を決めればきっと他の野党も垣根なく支援してくれるだろうという考えはありました。
共産の基礎票に届かなかった理由
相澤)結果をみると最下位で敗れました。共産党の基礎票にも届かなかった。
宮本氏)やっぱり野党に組織がない。足腰の組織があるのは共産党だけだから。自由党主催の演説会に行っても人が少なかった。選挙区内に野党の市議も少ないしね。立候補の表明がぎりぎりで、ほとんど時間もなく、しんどかったのは確かです。
それに共産党についていうと、実は今回のようなことは党にとっても初めての体験で、支持者から「宮本さんに入れていいんですか?」という問い合わせがかなりありました。これまでは共産党に所属していた人が無所属で立つというのは裏切り者扱いで、「入れんといてくれ」と答えるケースが多かった。時間がなかったこともあって陣営内にも戸惑いがありました。「宮本さんは(共産党と)たもとを分かって出たんですか?」という問い合わせもあったからね。結局、共産党の基礎票の77%しかとれていないのは、そういうことでしょう。
“野党共闘”の実情と、駆けつけた森友追及の仲間
相澤)そもそも野党で推薦を出したのは共産と自由、それに社民が大阪府本部の推薦。最大野党の立憲民主や、国民民主は自主投票でした。
宮本氏)それは過渡期だからね。日本全国からすると、野党共闘がピクリとも動かなかったのが、少し動いた。そこに意味がある。
枝野さん(立憲民主党代表)も玉木さん(国民民主党代表)も選挙事務所には来てくれたんですよ。枝野さんは(必勝を祈る)ため書きも持ってきてくれました。ただ街頭演説には立っていませんけどね。
立憲民主は、最大支援組織の連合が(元民主党で無所属で立候補した)樽床さんの支援だから、動きにくかった。党と党との関係は、そう簡単じゃないとは思っていました。
でも自主的に駆けつけてくれる野党議員はいたんですよ。川内博史、今井雅人(いずれも立憲民主)、森裕子(当時自由党)、ほかにも森友追及の仲間たち。森友追及を野党共闘でしてきたから、これまでとは違う動きを作れるのではと期待していた。その期待通り、彼らが集まってくれました。
安倍さんや維新よりも“いい夢”を…
相澤)それにしても実際に当選したのは維新(日本維新の会)、次点は自民の候補です。宮本さんをはじめ野党は安倍政権批判、大阪では維新批判を繰り返してきたけれど、安倍政権が国民の多数に、維新が大阪府民の多数に、支持されていることを認めるところから始まるのでは? 安倍さんや維新よりいい夢を有権者に見せることができていないんです。
宮本氏)もっといい夢を見せる…その通りだね。
反対だけでなく、安倍さんではない新しい選択肢を示さなくちゃね。みんなが安心して暮らせる政治。「こっちの方がもっといいよ」の戦略だね。安倍政権を倒して野党連合政権を作ると言わなければ本気と見てもらえない。
反対のための共闘ではなく、希望のための共闘。そのために野党がわだかまりを捨てて一つになれるかどうかだね。
かつての好敵手が選挙で支持を表明
相澤)最後に、今回の選挙戦で一番うれしかったことを。
宮本氏)それはね、これまで私とは反対の立場に立ち、私が批判してきた方から「支持する」という声を寄せて頂いたことです。元文部科学事務次官の前川喜平さん、森友学園の元理事長、籠池泰典さん、このお二人です。
前川さんは「面従腹背」と言うだけあって、現職の事務次官時代には下村大臣の下で政権側にいたから、国会で散々やり合ったんですよ。それなのに今回、「信頼し尊敬する政治家です」というメッセージをくださったんです。
籠池さんとは、森友問題を追及する立場で対峙してきたわけですが、選挙戦中、安倍首相の街頭演説会場を訪れて、「やはり宮本たけしさんしかいないという思いを強くした」と言ってくれたんですよね。相澤さんの記事で読みましたよ(笑)。
対峙してきた方々から応援して頂ける。政治家冥利に尽きます。