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#オフサイド AI判定 がサッカーをつまらなくする。カタールW杯で消えた幻の初ゴール

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
筆者撮影

KNNポール神田です。

サッカーW杯はフランス大会(1998)、日韓大会(2002)、ドイツ大会(2006)、南アフリカ大会(2010)を現地のライブストリーミングで担当してきたが、ブラジル大会(2014)、ロシア大会(2018)は移動距離の大変さで脱落した…。ITの進化とW杯を四半世紀にかけて追いかけてきた…。

今回のカタール大会(2022)は、ABEMA が無料生中継の全64試合の放映権利を獲得し全試合をネットでも視聴できるようになった。

ABEMA FIFA WorldCupチャンネル

https://abema.tv/video/genre/fifaworldcup

出典:筆者撮影
出典:筆者撮影

さらに、『4画面』という『画面編成』をリアルタイムで楽しめるようになった。

これもすべて、サイバーエージェントの『ウマ娘』の2021年のヒットのおかげだと思う…。

ABEMAのFIFA効果に期待がかかる。

□アベマの週間利用者数は目標としてきた1000万を上回る1500万前後

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC06C0E0W2A001C2000000/

■高額になった『放映権』は200億円超え…

□NHKが単独で購入した98年フランス大会の国内放送権料は5億5000万円だったのに対し、カタール大会に向けて電通がJCに示した金額は200億円を超え、金額面で折り合いが付かなかった。

□「このままだとW杯が日本で視聴できないかもしれない」という危機感も覚えた同社の藤田晋社長が獲得に踏み切ったという。

□賞賛相次いだ全64試合無料生中継「始めから無料が前提だった」

□ゲーム事業単体の売上高は2627億円(前期比68.6%増)、営業利益は964億円(同217.9%)。ウマ娘のヒットで、同社は1043億円の営業利益を記録した。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2211/20/news044.html

開催費全体でも31兆円と高額に、過去最高のブラジル大会(2014)の2.1兆円の15倍の規模となる。

■幻のエクアドル開幕戦のW杯初ゴール!

2022年11月20日SUN 開会式直後のホストのカタールVSエクアドルの初戦が開始となった。

カタール vs エクアドル 試合ハイライト|グループA

https://abema.tv/video/episode/16-76_s10_p90

前提として、テレビでも、ABEMAでも、FIFAから提供されている公式映像のみを放送し解説している。カタールの現場でも、スタジアムからの視点は一方向なので、判定はピッチにいるレフリーのみが判断を委ねるしかない。

特に、オフサイドのラインはテレビで視聴していても角度があると、非常にわかりにくい…。ピッチの真横でないとわからないからだ。

ゲーム開始後、3分経過、その時間が訪れる。

FKを獲得したエクアドルがゴール前へ送ったキックは、エクアドルのエストラーダ選手のヘッドが当てた…。そして、誰もが、その後の連携による初ゴールに湧いた。しかし、その後、

半自動オフサイド技術(セミ・オートメーテッド・オフサイド・テクノロジー(SAOT))』によって、判定は『オフサイド』となった。幻となったエクアドルのW杯初ゴールだった。

□FAIFAは3年かけて、SAOTを開発。特殊なカメラを使って選手の体のポイントを追跡するもので、これにより、際どいオフサイドも従来より迅速に判定できるようになった。さらに、その様子が3Dアニメーションでスタジアムやテレビで観戦しているファンに向けて放映される。

https://jp.reuters.com/article/soccer-wcup-var-idJPKBN2S9029

テレビの解説者も、いったい何が起こったのかがわからなかった…。ゲーム開始後3分のオフサイドが、5分経過した時にVTRで流された…。

出典:筆者撮影
出典:筆者撮影

3Dのアニメーションで再現…。ヘディングする前のエクアドルのエストラーダ選手の右足がわずかに飛び出ていた。

FKで群がる両チームの選手。通常の人間であればヘディングする選手の頭には注目すれど、足元には目が行き届かないはずだ。さらに、カタールのゴールキーパーが飛び出しているので、オフサイドラインがどこかの判断が本当にむずかしいはずだ。

□この新技術はスタジアムの屋根の下に設置された12台の専用トラッキングカメラを使って、ボールと個々の選手の最大29のデータポイントを1秒間に50回追跡し、ピッチ上の正確な位置を計算。収集された29のデータポイントには、オフサイド判定に関連するすべての情報が含まれている。

□また、大会公式ボール内部には慣性計測装置(IMU)センサーを搭載しており、難しいオフサイドを検知するためにさらに重要な要素を提供。ボールの中央に設置されたセンサーは1秒間に500回、ボールデータをビデオオペレーションルームに送信し、キックポイントを非常に正確に検出することが可能となっている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b385e236b8cb7a9d9e5754755f9759f1c8a331f8

ABEMAでの4画面でも監督の表情を読みとれるが、両監督ともにゴールのシーンでも冷静。また、判定結果でも冷静だった。

しかしだ…。もしも、この厳格な『半自動オフサイド技術(SAOT)』で、オフサイドを判定しはじめると、ほとんどのゲームで、『オフサイド』シーンが大量生産されてしまうことだろう。

そう、フォワードもディフェンダーも、何十年ものサッカー歴の中で、感覚的にかつ直感で『オフサイドライン』を意識してトレーニングしてきているからだ。つまり、『半自動オフサイド技術(SAOT)』の反応する『オフサイドライン』を意識できる選手は稀有な存在だ。2022年のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)でも採用されている。

そして、選手がこの『半自動オフサイド技術(SAOT)』のラインを感覚的に理解できるには練習の際から導入してトレーニングしない限りわからないはずだ。

テクノロジーによってより、精緻にデータを把握できるが、人間の感覚では、とうてい理解できないような計測データは、果たしてスポーツのような場面でも必要だろうか?

どうみても、オフサイドには見えなかった幻のゴールシーンは、今大会を機に増えることだろう。サッカー史の中で、目視によっておこなわれてきたオフサイドが、人間の感じるラインとの『差』を明確にだしはじめると…サッカーの点数の機会はさらに減ることだろう。

サッカーは結果を楽しむだけではなく、どう人間が連携して、鉄壁をこじ開けて、得点を得ることを楽しむスポーツだ。

主審はイタリアのオルサート。VARはイッラティ。

キックオフのカウントダウンも、654…で、あれれ…キックオフ開始。

321の興奮のスタジアムは拍子抜けだ。さぁ…番狂わせも含めて、波乱万丈のトーナメントが始まった。何よりも、寝不足の時間が少なくなる今大会は、テレビとABEMAの2つを比較しながら見る余裕さえ生まれた。

テニスのラインを見極めるVARは、たくさんの得点のうちのひとつで、肉眼との差を埋めてくれるものだ。

しかし、サッカーの場合のオフサイドのVARは誰もが経験していない厳しい判定となる。少なくともオフサイドが甘くなることはない。確実にオフサイドはアラートが鳴る。

目視で当然、オフサイドとは思えないシーンがオフサイドで中断されるというシーンが続けば…サッカーをつまらなくするのは明確だ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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