新人キャプテン→代表デビュー戦初トライ。姫野和樹はどこまで走るか。【ラグビー旬な一問一答】
優勝回数2回のオーストラリア代表に30-63と屈したラグビー日本代表にあって、明るい話題を提供したのが姫野和樹だ。
11月4日、2年後のワールドカップ日本大会の決勝の舞台となる神奈川・日産スタジアムで日本代表の背番号4をつけ先発フル出場。この日をテストマッチ(国際真剣勝負)デビュー戦とした。
ノーサイド直前には初トライも決める。
敵陣ゴール前右中間での自軍ボールスクラムから継続するなか、ゴールポストほぼ正面でパスを受ける。相手タックラーにぶちかまし、しばし相手の圧力に耐え、接点のあった方向へ身体を回転させて前進。リーチ マイケルの援護を受けながら、そのままインゴールへなだれ込んだ。ぶちかまして接点側へロールという動きは、試合を通じて何度も繰り出していた。
身長187センチ、体重108キロの姫野は、帝京大学で大学選手権8連覇を達成も、不動の先発となったのはラストイヤーのみ。下級生時は負傷にも泣かされており、過去のキャプテン経験は「高校の頃の東海選抜の時と、20歳以下日本代表での1試合だけ」。それでもトヨタ自動車では、変革を期すジェイク・ホワイト監督から重責を与えられ、国内トップリーグでアピールするうちに代表入りを果たしていた。
トヨタ自動車でプレーするフォワード第3列(フランカー、ナンバーエイト)を本職とするも、日本代表では帝京大学時代と同じロックを任される。希望ポジションよりはひとつ手前の位置に入り、空中戦のラインアウトでは人生で初めてサインを出す「コーラー」を任される。
以下、オーストラリア代表戦後の共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――トライシーン。
「ランの部分というのは手応えを感じていたので、感覚的に行けるな、とは思っていました。相手も疲れてきたところで、走り勝とうというイメージはあった。走って、ボールを持って、キャリーして、トライして…と。いいシーンだったかなと思います」
――防御にぶち当たった瞬間に身体を回転させ、接点のあった方向へ抜け出す…。この日はそういう形が多かったですが。
「相手のディフェンスが高かったので、その分、僕が(当たった瞬間に)動けるスペースがあった。あれで(タックルが)下に来られていたらあのプレーはなかったのですけど、(トライシーンでは)リーチさんのいいサポートもあって、タックルを外すことができた。ターンして、前が空いて(いるのが見えて)、飛び込むことができた」
――オーストラリア代表の選手とぶつかってみての印象。
「個のフィジカルは強い。僕もパワーで、パワーでという感じのキャリーではなく、少しでもずらしながら、ずらしながら前に持っていくと、うまく対応できたかなと思います」
――何度か落球したが、気持ちを切り替えられた。
「前半の時に、タックルを外して前に出られる場面が多くあったのですけど、そのなかでボールを前に落としてしまうシーンがたくさんあったと思います。でも、ファーストキャップですし、自分のやれることをのびのびやろうと思いました。先日の世界選抜戦(28日、福岡で27-47と敗戦)であまり自分のプレーができなかった。コーラーもやりましたし、頭のなかがパンパンになって精一杯になって、自分のプレーができなかったという反省があって。きょうは自分のやれることをやろうと臨んだ結果が、こうなったのかなと思います」
――きょうはのびのびできたか。
「周りのリーチさん、布巻(峻介)さんなどがサポートしてくれていたので、自分の負担が少し減って。また代表に入って2週間経って、考えずに代表のラグビーができるように身体のなかに落とし込めています。そこはよかったと思います」
今後の課題は防御と安定感か。当の本人も別の場所で、突破した直後の落球、防御時の出足について反省していた。チームは8日、フランスへ発った。19日にはトンガ代表、26日にはフランス代表とそれぞれ激突(いずれも日本時間)。姫野は代表定着へのきっかけを掴めるだろうか。