日本人は「先進国イチの怠け者」か?
先日、なかなか刺激的な記事が話題となりました。
日本人はすでに先進国イチの怠け者で、おまけに労働生産性も最低な件
要約すると「世界的に見て日本人の労働時間はけして長い方ではなく、労働生産性にいたっては先進国中最下位だ、この上で残業抑制なんてやったらさらに経済が頭打ちになるんじゃないか」というものです。
本当に日本人は怠け者で仕事もできない困った人たちなんでしょうか。簡単に考察していきましょう。
日本の労働時間は今でも先進国No1
確かに、記事の指摘するようにOECD統計を見ると、日本の2014年の年間労働時間は1729時間であり、米国(1789時間)、イタリア(1734時間)、韓国(2124時間)などよりも少ないように見えます。ただし、この数字は非正規雇用も含まれたものであり、また、給与支払いベースのため“サービス残業”分が含まれておらず、一般的なサラリーマンの働きぶりを正確にあらわしているとは言い難いものです。実際この数字を見て「自分の周囲はもっといっぱい働いてるけど」と感じる人は少なくないでしょう。
では、実際のところはどうか。労働者個人に聞き取り調査した資料によれば、全体で1963時間、正社員に限ればなんと2347時間にまで跳ね上がります(総務省労働力調査2012)。やはり日本人は今でも世界トップレベルの長時間労働を続けているということです。そもそも、そうでないと“Karoshi”なんて英語が広まりませんから。
ただ、労働生産性については記事の指摘通りで、先進国中真ん中あたり、G7では最下位に甘んじています。ですので「日本人はすでに先進国イチの怠け者で、おまけに労働生産性も最低な件」というよりも、「日本人は先進国一の頑張り屋さんだけど、空回りして成果が上がっていない件」とでもするべきでしょう。
頑張っても空回りするワケ
では、なぜ日本人は空回りしてしまうのでしょうか。理由はいくつかありますが、終身雇用であるために人に合わせて余分な仕事を作ってしまう点、(成果が時間に比例しない)ホワイトカラーまで時給管理されているために付加価値を高めるインセンティブが働きにくい点などが挙げられます。
というとピンとこない人もいるかもしれませんが「ハンコを押すまでに最低3回は突き返すことが自分の仕事だと勘違いしているイタい中間管理職」とか「会議では3分で読み飛ばされる資料を重箱の隅をつつくように徹夜して作ってドヤ顔する同僚」と言えば、きっと誰でも思い当たる人はいるでしょう。
今回の働き方改革では残業時間の抑制だけがクローズアップされ、上記のような空回りを防ぐ議論がおざなりになっている印象があります。その結果、サービス残業が今以上に蔓延したり、一人あたりの生産性がさらに停滞するリスクがあるということは留意すべきでしょう。