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「介護寿命県別ランキング」に見る、最も介護が必要のない健康長生き県はどこか

斉藤徹超高齢未来観測所
だれしも病気や要介護にならず長生きしたい(写真:イメージマート)

「健康寿命」と「介護寿命」

人間だれしも病気や要介護にならず長生きしたい。そう思うのは当然のことでしょう。しかし現実には、そういうわけには行きません。突然死を除けば、死の前には、何らかの病気になる期間や介護が必要となる期間が生じます。

ならば出来るだけその期間を短くしたい。そうした願望を受けて、「健康寿命を延ばそう」という気持ちが多くの人に生まれてきました。

しかし、「健康寿命」は、介護状態になる年齢のことではありません。そこで介護状態になる年齢のことを「介護寿命」と命名し、「健康寿命」と「介護寿命」の違いを以前、Yahoo!ニュース記事としてご紹介いたしました。

その記事でも説明しましたが、「健康寿命」(=健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる状態)のデータはアンケート結果に基づくもので、県別の健康寿命は算出していないのに対し、「介護寿命」(=要介護2以上となる状態)は、国保のデータベースを利用しているので、県別の「介護寿命」を算出することが可能となります。

県別に見た介護寿命ランキング

そこで、今回はそのデータを活用して、男女別の「介護寿命」を県別にランキングしてみました。介護寿命の高い県別に並べて表にしたものが表1・2です。(ちなみに介護寿命が同じ県の順位は同順位とし、以下の順位を繰り述べています)

表1 介護寿命県別ランキング(男性)

国民健康保険中央会資料から筆者作成
国民健康保険中央会資料から筆者作成

表2 介護寿命県別ランキング(女性)

国民健康保険中央会資料から筆者作成
国民健康保険中央会資料から筆者作成

これを見ると男性の平均介護寿命79.7歳に対し、女性の平均介護寿命は84.0歳と女性の方が4.3年高いことがわかります。

県別に見ると、最も介護寿命が高いのは男女ともに長野県で、次いで滋賀県と両県の介護寿命が高いことがわかります。これ以外に男女ともに上位に入っているのは、兵庫県、石川県、三重県、広島県、大分県、静岡県、愛知県などで、ともに上位10県に入っています。

一方で男女ともに下位県に名を連ねているのは、青森県、福島県、沖縄県、岩手県、秋田県、北海道などで、全般的に見れば西高東低の傾向があると言えるでしょうか。

「介護寿命」と「平均余命」の関係

それでは、「介護寿命」と「平均余命」の関係はどうなっているでしょうか。

それを同じく「平均余命」の高い順に県別に並べものが表3,4となります。

表3 平均余命と介護寿命の差(男性)

国民健康保険中央会資料から筆者作成
国民健康保険中央会資料から筆者作成

表4 平均余命と介護寿命の差(女性)

国民健康保険中央会資料から筆者作成
国民健康保険中央会資料から筆者作成

「平均余命」が長いのは、「介護寿命」の長い県と同じ、長野県、滋賀県で、男女ともに上位に名を連ねています。また、男性では奈良県、女性では島根県の「平均余命」が高いことがわかります。

男性は、「介護寿命」と「平均余命」の間におおむね1年強の差があることがわかります。多くは1.3年から1.5年に集中しており、県による違いはさほど大きくありません。これはすなわちどの県でも、介護が必要とされる期間にさほど違いはないということを意味します。

一方で、女性の場合は「介護寿命」と「平均余命」の差はおおむね3年前後ですが、県によるバラツキがうかがえます。介護が必要とされる期間は、最も長い京都府の3.7年に対して、最も短い佐賀県では2.5年。県によって1年以上の差があるところが男性との違いです。その他、介護が必要とされる期間が長い県としては、沖縄県(3.5年)、神奈川県(3.4年)、大阪府(3.4年)などが挙げられます。

これらのデータは、あくまでそれぞれの県の平均値を示したものなので、この数字だけで一喜一憂する必要はないと思います。しかし一方で、これらは地域や県民の特性を一定程度反映した数値結果でもあるはずです。お住まいの県の傾向を把握した上で、今後の生活設計を考えていく参考になれば幸いです。

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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