新ポスティング制度が未だ合意できないワケ
現行のポスティング制度が11月1日に失効した。MLBサイドから制度見直しを求める要請があり、NPBとの間で新制度締結を目指して討議が続けられてきたが、未だに合意に達していない。すでに西武の牧田和久投手がポスティング制度を利用してのMLB挑戦したい意志を表明し、さらに大谷翔平選手もMLB挑戦が有力視されており、1日も早い新制度合意が待たれるところだ。
そんな中『New York Post』紙のジョエル・シャーマン記者が1日、ポスティング制度交渉の舞台裏をレポートする記事をまとめている。
同記者によれば、すでにMLBとNPBの間で新制度は合意間近まで来ているという。新制度では、選手と契約を結んだMLB球団から元所属先のNPB球団に支払われる入札額を選手の契約総額の15~20%にするというものだ。しかし大谷翔平選手が所属する日本ハムがこれに異を唱えているため合意できない状態になっているらしい。
日本ハムが反対する理由は単純だ。昨年12月にMLBと選手会が合意した新労使協定下では、23歳の大谷選手がMLBに移籍する場合“外国リーグ出身のFA選手”の扱いを受けず、アマチュア選手として限度内の契約金とマイナー契約しか提示できないためだ。そのため大谷選手がどのMLB球団と契約したとしても、総額は30万~350万ドル(約3400万~4億円)に抑えられてしまうため、日本ハムが新制度で得られる入札金は1億円にも満たない額になってしまうためだ。
そのため日本ハムは大谷選手を新制度から除外し、入札額の上限を2000万ドルとする旧制度を適用させる方向で交渉を続け、MLB側も“特例措置”に前向きな姿勢を示しているようだ。しかしこれに待ったをかけているのが選手会の存在だ。
現在MLBはNPB以外にもKBO(韓国プロ野球)との間でもポスティング制度を設定しているほか、キューバを含めた外国人選手の獲得についてもルールを設けているが、これらはすべて選手会の了承を得なければならないのだ。もちろん新制度に特例措置を設けることも選手会が了解しなければならないのだが、新労使協定に違反することになる特例措置設定を認めようとしないらしい。
ただ選手会は入札額を制限し選手の収入をより増やすことに繋がる新制度を好意的に捉えており、特例措置さえなければすぐにでも了承する構えをみせているという。
まさに大谷選手の存在が新ポスティング制度交渉を複雑化させてしまっているということだ。果たしてそれぞれの思惑を満たすような解決策を見出すことができるのだろうか。