女子ゴルフ2年連続賞金女王を目指す鈴木愛「もう1度取れば本物」、狙うもう一つの1位とは?
「買いたいものはないんです。勝ちたいんです」
寝ても覚めてもゴルフのことばかり。ファッションや外見を気にするよりも、常に頭の中はゴルフ。物を残すよりも、結果と勝ちにこだわる――。
鈴木愛はそんなプロゴルファーだ。
そんな彼女が、「最高に贅沢をした」というのが、最終戦が終わったあとの宮崎空港だった。
「今まで賞金額が少なくても多くても、あまり買いたいものがなくて。ちょっと贅沢をしようと思ったらすべて、ご飯に変わります(笑)。母に『頑張ったやろ?!肉買って!!』って言って、宮崎空港で宮崎牛をたくさん買いました(笑)。物欲もなく、たまに見て欲しいなと思ったら買うくらいなんです。貯金通帳も見るのは年に一回くらいで、そこまでモノに興味がないんです……」
23歳ならブランド品が欲しくなったり、オシャレにも興味のある年頃だろう。
だが、まったくそこに目がいかない。そもそも頭の中にそういった知識がないのかもしれない。とにかく、ゴルフしかしてこなかったからだ。
海外勢には常に対抗したい
日本の女子ゴルフツアーで現場取材していると、関係者やギャラリーからこんな声をよく耳にするようになった。
「もうこのままだと、いつか韓国ツアーにでもなってしまうんじゃないか」
それくらい、近年の女子ゴルフツアーは、韓国勢など外国人選手が台頭している。
2017年は37試合中、18試合で海外選手が優勝し、2015、16年賞金女王のイ・ボミのほか、昨年は賞金女王争いに加わったキム・ハヌル、元米女子ツアー賞金女王の申ジエなどの実力者が、ツアー人気をけん引していると言っても過言ではない。
2017年シーズン、そこに割って入ったのが鈴木愛だった。優勝は2回だが、トップ10入りは16回、特に国内メジャー3試合でトップ10入りして、勝負強さを発揮。プロ5年目の23歳で、初の賞金女王となった。
「やはり最近の外国人ばっかりだと、見ている方もプレーしている選手も『またか……』って思うと思うんですよ。もちろん、強い選手に勝てないのは、実力がないからですが、常にそこには対抗したいと思っています」
2010年から2016年まで、2013年の森田理香子以外は、すべて外国人選手が賞金女王。
この現状を鈴木はどうにか打開したかった。かつて鈴木は、海外勢に賞金女王のタイトルを取られ続けていることを、「悔しい」と吐露することもあった。
優勝争いできる回数が増えるにつれ、負けん気の強さも増しているようだった。
4年ぶりの日本人賞金女王となったあと、昨年12月のオフに彼女と会ったとき、当時の激闘をこんな風に振り返っていた。
「実は9月ぐらいから、ずっとプレッシャーを感じていたんです。賞金ランキングトップを走っていた(キム・)ハヌルさんと差も開いていたので、もっと上位争いしないと、賞金女王になるのは厳しいと思っていました。だって、途中から、調子が悪くなくても悪く感じたり、ハヌルさんや(イ・)ミニョンさんが自分より調子がいいと『ヤバイ、ヤバイ、これは抜かれる』ってずっと思っていました。正直、ほかの選手を全く見ていなかったです。もう2人の成績をずっと見るようになって、そればっかり気にしながらやっていました」
「平均パット数で1位に」
去年の争いが、かなりプレッシャーだったことがよく伝わってくる。当然、見ているほうは、終盤での賞金女王争いがデッドヒートするほど楽しいが、当の本人は「なるべくなら競りたくない(笑)」と苦笑いを浮かべる。
「それでも、もう一回、賞金女王を取ったら本物だと思うので、今年はもっと勝利数を上げて取りたいです。それにもっと目標がほしいです」
賞金女王のほかに、取りたかったタイトルがある。それは平均パット数で1位になることだ。
女子ツアーでは”パットの女王”とも言われる鈴木。その卓越したパッティング技術を褒める選手も多い。
昨年、最終戦が終わったあと、鈴木は申ジエに平均パット数で1位を譲ったことに、相当プライドが傷ついた。
「去年は1.75台だったので、今年は1.72か1.73台で終わりたいです。それができれば、勝てると思いますね」
2年連続賞金女王になるという明確な目標を立てたということは、2018年も再び苦しい重圧と戦わなければならないかもしれない。
ただ、それを楽しむ術は経験済みだ。勝利にどん欲な女王の新たな1年がスタートする。