Yahoo!ニュース

児童虐待通報電話「189」(いち早く)がスタート:あなたの隣で苦しんでいる子どものために

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■児童虐待通報電話「189」(いち早く)スタート

児童虐待の通報や相談窓口となる全国共通ダイヤル「189(いち早く)」の運用が1日、スタートした。〜189をダイヤルすれば24時間、最寄りの児童相談所(児相)の窓口などに電話が転送される。〜

「1」から始まる3桁の電話番号は警察の「110」や消防の「119」など、緊急性を要する場合に割り当てられる。新たな番号は12年、海難事故通報の「118」以来、15年ぶり。

出典:児童虐待通報「189」スタート 厚労省「近隣住民らアンテナ活用したい」 産経新聞 7月1日

■通報は国民の義務

児童虐待を発見した時の通報(通告)は、私たちすべての国民の義務です(児童福祉法25条)。通告する時には、児童虐待をしている確信を得る必要はありません。「もしかしたら虐待かな」でOKです。「通告」というと堅苦しいですが、「相談」でも大丈夫です。匿名でも、知らせることができます。

病院や学校のスタッフも、同じように通報の義務があります。患者や児童に関することを外に話すわけですが、この場合は守秘義務には反しません。

とはいえ、近所の人も、学校教職員も、いざとなるとなかなか勇気がいるでしょう。社会全体で、通報することが当たり前になると、一人一人が通報しやすくなると思います。

■深く傷ついている子どもたち

虐待の結果、こそもが死亡すれば、大きなニュースになります。でも、そうでなくても、深く傷ついている子どもたちがいます。人は、大きなショッキングな出来事で傷つきます。大地震や大事故にあって、PTSDになる人もいます。

児童虐待は、大地震や大事故のようなことは起きません。けれども、一回の出来事ではなく、何年にもわたって毎日のように辛い目にあいます。しかも、相手は一番頼りんしたいはずの親です。その結果、深い心の傷ができて「複雑性PTSD」になる人もいます。大人になって親から離れた後も、心の症状が残る人がいるほどです。

虐待されている子どもが、家で泣くだけではなく、何かのSOSを誰かに出すときもあります。それでも、周囲の大人が的確に動けないと、子どもは本当に孤独と絶望の世界に落ちていきます。

ひどい虐待で苦しんでいる子どもは、ドラマや児童相談所の中にいるだけではなくて、私たちの町にもいる、私の隣にもいるという想像力を、持ちたいものだと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

心理学の知識と技術を知れば、あなたの人間関係はもっと良くなります。ただの気休めではなく、心理学の研究による効果的方法を、心理学博士がわかりやすくご案内します。社会を理解し、自分を理解し、人間関係の問題を解決しましょう。心理学で、あなたが幸福になるお手伝いを。そしてあなた自身も、誰かを助けられます。恋愛、家庭、学校、職場で。あなたは、もっと自由に、もっと楽しく、優しく強く生きていけるのですから。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

碓井真史の最近の記事