WTO(世界貿易機関)事務局長選挙で韓国が勝てない4つの理由
注目のWTO(世界貿易機関)事務局長選挙は韓国の兪明希・産業通商資源部通商交渉本部長とナイジェリアのヌコジ・オコンジョイウェアラ元財務相の一騎打ちとなっているが、どちらに決めるかの最終段階の選考は今月19日から始まっており、27日に終了し、11月7日には「勝者」が発表される。
韓国は初のWTO事務局長の椅子を狙い、国を挙げて、兪候補を支援している。
文在寅大統領自らがEUのイタリア、ルクセンブルク、デンマークをはじめエジプト、インド、マレーシア、カザフスタン、チリなど各国首脳に直接電話で支援を呼びかけたほか、No.2の丁世均首相もコロンビアのイバン・ドゥケ大統領やグアテマラのギレルモ・カスティーロ・レイズ副大統領、スリランカのマヒンダ・ラージャパクサ首相らと通話し、協力を要請していた。
文大統領の「兪本部長はWTOを改革する適任者であるので総力を挙げて応援しよう」との号令の下、外務省も後方支援に乗り出し、康京和外相がEUのデンマーク、ポーランド、オーストリア、スウェーデンの外相に、崔鍾建外務第1次官が駐韓ノルウェー大使と新任の在韓欧州連合(EU)大使内定者と会い、支持を要請した。
また、WTOへの拠出金が最も多く、貢献度も高い米国に対しては柳勲国家安保室長が訪米し、オブライエン ホワイトハウス国家安保補佐官ら米国の高位人物らに会い、後ろ盾になるよう働きかけていた。韓国では「米国から支援を真剣に検討する」との前向きの反応を得たと伝えられているが、米国も含めてどの国もまだ公式的な態度を表明していない。
WTO事務局長は投票ではなく、164の加盟国のコンセンサス(全会一致)で決まる。一般理事会議長が各国の考えを個別に聴き、一人に絞り込む。兪候補は善戦しているものの現状では、当選の可能性は乏しい。主な理由は以下4つに集約される。
1.アフリカ初の事務局長への待望論がある。
歴代の事務局長は英国、スイス、イタリア、フランスなどEUから6人と、ニュージーランド、タイ、ブラジルからそれぞれ排出されているが、アフリカ大陸からはゼロだった。アジアではすでに2002年から2005年までアジア欧州会合(ASEM)の発足に奔走したスパチャイ・バニチャパック元副首相が事務局長に選出されている。従って、WTO内には今回はアフリカから選ぶべきとの同情論と待望論が根強くある。
2.国際的知名度(ネームバリュー)で劣る。
元外相のオコンジョイウェアラ候補はWTOに資金を拠出している世界銀行の専務理事を務めるなど国際舞台では高い認知度を誇っている。財務相も経験しており、金融・経済・開発分野での豊富な経験を有している。一方の兪明希候補は米国、EU,中国との2国間協定を締結させたことでそれなりの知名度があるが、世界銀行で25年間も君臨していたオコンジョイウェアラ候補に比べれば劣る。
3.支持基盤に差がある。
WTOの加盟国は164か国だが、オコンジョイウェアラ候補が「全てのアフリカの国々は私の後ろ盾である」と述べているアフリカ連合(55人)はその3分の1を占めている。オコンジョイウェアラ候補は「カリブ海の国々なども、支持の意思を明らかにした」として自身にすでに支持を表明した国々は79か国に上ると語っていた。仮にEU(27か国)が支持を表明すれば、支持国の数で兪候補を圧倒することができる。仮に米国が韓国側に付いたとしても、WTOからの脱退を示唆しているためかつてのような影響力を期待できない。
4.同じアジアの中国と日本がナイジェリアを支援している。
アフリカへの投資を拡大する中国と、輸出管理厳格化措置を巡って韓国からWTOに提訴されている日本の両国がナイジェリア候補を推しているとも伝えられている。アジアの経済大国である日本と中国が同じアジアの候補ではなく、ナイジェリアの候補を支援しているのは韓国にとっては痛手で、不利に作用している。
文在寅大統領は大統領民情首席秘書官として仕えた盧武鉉政権下の2006年10月に国連事務総長選挙に立候補した潘基文前外相がインドの国連事務次長やスリランカの元国連事務次長(軍縮局長)らを破って、当選した前例もあることからEU諸国さえ取り込めば、逆転は可能とみて、EU諸国をターゲットに最後の最後まで兪明希当選に向けロビー外交を展開することにしている。