登板4試合の平均球数は77球!レンジャーズが有原航平をフル稼働させない理由
【大谷選手との元同僚対決を制した有原投手】
今シーズンからレンジャーズに在籍する有原航平投手が、現地時間の4月19日に行われたエンジェルス戦で今シーズン4度目の登板に臨み、6回途中を投げ、2安打無失点、6奪三振の好投で2勝目を上げた。
この試合は、日本ハムで一緒だった大谷翔平選手との元同僚対決が注目を集めたが、すでに日本のメディアでも報じられているように、4回の第2打席にあわやホームランという大飛球をセンター方向に運ばれたが、結果的に2打数無安打に抑えている。
前回のレイズ戦に続き、無失点投球で2連勝を飾った有原投手。登板する度に首脳陣からの信頼が増していくような投球を披露している。
【大谷選手の併殺打で流れを掴む?】
この日の有原投手は、決していい立ち上がりではなかったようだ。試合後本人が振り返っているのだが、あまり腕を振れている感覚がなく、変化球を見逃されてしまう状態だったという。
そんな中で、先頭打者にセンター前ヒットを許し、無死一塁で大谷選手との初対決を迎えることになったのだが、カットボールで一塁併殺打に打ち取ることに成功している。
「(カットボールは)ちょっと思い描いたボールではなかったので、ああいう強い打球になってしまったんですけど、その中でファーストのいいプレーでツーアウトを取れたのは、この試合最初のアウトでしたし、すごくホッとしました」
大谷選手の併殺打でピンチを切り抜けたことで、結果的に精神的に落ち着くことができた。そして2回以降は腕を振ることを意識しながら投げたことで、今回の好投に繋がったというわけだ。
【イニング途中交代を悔やむ有原投手】
ただ2試合連続の好投を演じながら、有原投手は手放しで喜んでいるわけではない。6回を投げきれず途中交代したのは、やはり先発投手としてスッキリしない部分があったようだ。
「途中まではよかったんですけど、最後のところ…。フォアボールを出してヒットで交代というのはちょっと悔しさが残るので、次は最後ビシッと終えて代われるようにしたいなと思います」
ちなみに前回のレイズ戦でも同じく6回途中で交代しており、自分で作り上げたピンチを切り抜けきることなく、リリーフ投手に託すかたちになった。日本ハムではエースの役割を担ってきた有原投手からすれば、やはり自分の仕事をやり切ったという感覚が薄れてしまうのだろう。
【登板4試合はすべて85球以内】
もちろんレンジャーズは、有原投手の日本ハム時代の実績を評価しているからこそ彼を獲得しているし、彼がピンチを招いても打開できる能力を有していることを重々理解している。
だが現在のチームは、有原投手の能力を最大限に発揮させること以上に重要視していることがあるのだ。それは、ここまでの彼の球数を見れば明らかだ。
今シーズンの有原投手は、前述通りこの日のエンジェル戦を含め4試合に登板しているのだが、最多球数はレイズ戦の85球。しかも、それ以外の3試合はすべて70球台に止まっている。
ちなみに昨シーズンの有原投手は20試合に登板し、平均球数は103.6球。7月24日のソフトバンク戦では、8回完投で、シーズン最多の132球を投げている。
だがこのデータは、あくまでNPB流の中6日登板をベースにしているものだ。MLBに移籍した有原投手は現在、初めて経験するMLB流の中4、5日登板に適応している真っ只中にいるのだ。
【チームはあくまで慎重姿勢】
クリス・ウッドワード監督は有原投手の現在の起用法について、以下のように説明している。
「今日は75~80球の予定だった。オオタニにホームラン性の当たりを打たれる場面もあったが、基本的に相手を圧倒する投球を続けてきた。
だが我々は、彼が2試合続けて中4日で投げているのを認識している。その点はずっと意識し続けていることだ。このまま投げ続けていく中で、彼が問題なさそうに見えれば、もう少し(球数を)増やしていくことになるだろうが、現時点ではもう少し今の状態を続けていくだろう」
チームの姿勢は、とにかく無理をさせずに有原投手の状態を確認しながら、徐々に球数、イニングを伸ばしていければと考えているのだ。
【昨シーズンの前田投手の平均球数は89.6球】
ここ数年MLBの潮流として、先発投手の平均球数が減少傾向にあるが、特にツインズ移籍1年目の前田健太投手は、球数のみならず登板間隔もかなり配慮されていた。
短縮シーズンで11試合の登板に止まりながらも、登板間隔は中4日が1回に対し中5日が9回と、チームは決して無理をさせなかった。
さらに球数も、ノーヒットノーランがかかった8月18日のブルワーズ戦は115球を投げているのだが、残り10試合はすべて100球未満。しかも90球を超えた試合も4試合しかなく、平均球数は89.6球に止まっている。
こうした事実からも、レンジャーズは当分の間、有原投手に無理な登板をさせることはないだろう。ただ限られた球数で長いイニングを投げられるようになれば、その分だけ彼の投球自体が進化していくことにも繋がっていくのだ。
NPB時代の有原投手を知る人たちからすれば、やや物足りなさを感じるかもしれないが、もう少しの間は我慢するしかなさそうだ。