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奥田愛基さん殺害予告、保守もリベラルも断固たる態度をーネット上の安倍支持層には暴力容認論者も

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
国会前で安保法制反対を訴える奥田愛基さん 先月30日、筆者撮影

SEALDsの中心メンバーである奥田愛基さんやそのご家族への殺害予告に、筆者も憤っている。報道されているように、奥田さんが在籍する大学に脅迫状が届いたという。奥田さん本人がツイッターで報告、警察にも被害届けを出したそうだ。

当たり前だが、言論に対し、人身に危害を加え命を奪うというような脅迫を行うということは絶対に許されないことだ。言論・表現の自由を暴力で封じ込めようとするのは、民主主義社会の根底を揺るがす。思い出してほしいのは、仏紙シャルリー・エブド編集部への襲撃事件に対し、フランスでは過去最大規模のデモが行われ、人々が凶行を許さない姿勢を見せたことだ。あのデモ参加者には、シャルリー・エブド紙の風刺画に批判的な人々もいた。だが、同紙の批評が好きであろうとなかろうと、言論・表現の自由を暴力で封じ込めようとすることは許さない、というフランスの哲学者ヴォルテールの言葉「私はあなたの意見には反対だ。だが、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」を体現したのが、「私はシャルリー」のデモだった。

なぜわざわざこんなことを書くかというと、今回の奥田さんへの脅迫の件でツイッターでは一部の人々による心ない投稿が散見できるからだ。

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ネット上の心無い書き込み
ネット上の心無い書き込み

悪ふざけで書いている人々もいるのだろうが、書いて良いこと悪いことの区別がつかない、現代のネット社会の闇に懸念を感じざるを得ない。既に上記したことだが、大事なことなので、繰り返す。言論に対し、人身に危害を加え命を奪うというような脅迫を行うということは絶対に許されないことだ。そして大事なことは、こうした卑劣な行為を、私達は断固許さないという姿勢を一人でも多くの人間が示すこと。本当に犯行に至るかそうじゃないかの問題ではなく、脅迫自体許さないという姿勢を示すことだ。そして、それは政治的に保守だろうが、リベラルだろうが、安保法制を支持するか否かは関係ない。民主主義国家としての最低限守られるべきことなのだ。

基本的人権は守られるべき。憲法に定められた権利は保障されるべき。こうしたことは、むしろ自民党支持者の皆さんにこそ、意識していただければ、と願わざるを得ない。なぜならば、安倍政権は来年夏の参院選の公約として、「憲法改正」に言及しているからだ。また、自民党が掲げている憲法「改正」草案は、国家の都合により、個人の権利を制約する傾向が色濃いものだ。自民党がそのウェブサイトで公開している『憲法改正Q&A』では、人間は生まれながらにして自由・平等であり、幸福を追求する権利があるという「天賦人権論」について、「こうした規定は改める必要がある」と明記されているのである。「表現及び結社の自由」についても、自民党憲法「改正」案では、「公益及び公の秩序」、つまり国家都合で表現の自由を制限できるよう、改悪しようとしているのである。

【関連記事】http://bylines.news.yahoo.co.jp/shivarei/20130720-00026574/

今回の奥田さんの件に関する一部のネットの言説を見ていると、政権に批判的な人物への暴力すら容認する人々が、安倍政権の支持層でもあることに不気味なものを感じる。こうした支持層に支えられ、安倍政権がますます憲法を根底から否定するような振る舞いをするのではないか。だからこそ、再度強調しておきたい。日本は民主主義国家であり、基本的人権が守られるべきことは、保守であってもリベラルであっても共通認識であるべきだろう。当然、奥田さんやそのご家族への脅迫行為や、それを支持する風潮を、断固として否定していかなくてはならないのである。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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