【自由研究に】"推し"をマーケティングトレースしてみよう!
8月に入り、そろそろ夏休みも折り返し地点になってきました。もう夏休みの宿題は「全部終わった」という子もいれば、まだ絵日記や読書感想文、自由研究などに頭を悩ませているご家族も多いのではないでしょうか。そこで今回は、さまざまな仕事にも役立つ『マーケティング的思考』を、自由研究としても取り組みやすい”推し”の分析で試してみたいと思います。
筆者は、大学時代にマーケティングを専攻、営業・販売職、現在のライターの仕事においても、マーケティングトレースは役に立っています。小学生でも"推し"がいる人は多いと思うので、「好き」という気持ちを、少し客観的に分析してみてはいかがでしょうか。
マーケティングトレースとは?
『マーケティングトレース』とは、マーケティング的思考を鍛える”筋トレ”のようなものです。周りがやっているから、なんとなく筋トレをするのと、目標を決め、その目標のために『計画』を考えられる人とでは、効果が違うと思いませんか。マーケティングにおいても、『戦略』が大切であり、それを言語化・構造化できるかどうかが、成長の鍵とも言えるでしょう。
ジムに行けば、効果的に筋肉を鍛えられるマシーンがあるのと同様に、マーケティングトレースにおいても、誰でもできるフレームワークがあります。さらに、世に出ている商品や会社は、既にプロのマーケターが戦略を考え、効果的な宣伝がされています。なので、「どうして有名になったのか」「何で自分は推しているのか」を客観的に分析し、『答え合わせ』をするイメージで取り組んでみるとよいかもしれません。
さっそく、”推し”をトレースしてみよう!
まずは、どの”推し”を分析するか決めましょう。人、商品、会社、生き物など何でも結構です。もし、その”推し”にビジョンがあるなら、それも調べてみましょう。マーケティングトレースをするにあたり、全部で7つの大きな項目があるので、順番に取り組んでみましょう。
① 外部環境分析(PEST分析)
自分が推すようになったきっかけや、推しが誕生したきっかけを、客観的に分析するために、まずは世の中の動きを分析していきます。
Politics(政治)現代の政治的な話題や問題を、実際にニュースなどを見て考えてみましょう(例:内閣支持率の低迷、多様性への理解など)
Economy(経済)現代の経済状況を、実際にニュースなどを見て考えてみましょう(例:円安、物価高騰により家計圧迫など)
Society(社会)現代の社会のトレンドを、情報番組などでどんな特集が多いかを参考に考えてみましょう(例:推し活、コスパ重視など)
Technology(技術)現代の技術の進歩や影響を、保護者の人と考えてみましょう(例:インターネットの普及により情報過多、AIの発達による業務効率化など)
本来のマーケティングトレースであれば、過去と未来の視点でそれぞれ分析しますが、今回は分析対象が既に存在しているものなので、現在の視点で分析します。
② 競合の定義
競合の定義には、業界競合と価値競合があります。業界競合というのは、例えばあるボーイズグループを推しているとしたら、他事務所のボーイズグループやガールズグルーブ、シンガーソングライターなどが該当します。価値競合というのは、推しによって得られる価値が、例えば”癒し”だった場合、温泉や小動物など、推し以外で癒しを感じられるものを挙げてください。
本来のマーケティングトレースでは、競合の定義に『5Forces分析』というものを用います。「新規参入」「直接競合」「代替品」「買い手」「売り手」の5つの要素から考えていきます。興味のある人は、それらの要素を意識し、チャレンジしてみてください。
③ ターゲティング
ターゲティングとは、推しがどのターゲットを、顧客として重点的に狙っているかを考えていきます。年齢や性別、行動特性(どういった習慣があるか)、嗜好性(どんなことをして過ごすのが好きか)を自分を参考に考えてみましょう。
④ ポジショニング
ポジショニングとは、十字に線を引いて、②で考えた競合たちと比べ、自分の推しはどの位置にいるかを考えるワークです。2軸(縦軸、横軸)の選択肢は無数にあるので、推しの優れている点を考え、それを2軸に据えて競合をマッピングしていくとよいと思います。推しの独自性(唯一無二だと思う点)や競合と差別化できていることは、何なのかを考えてみましょう。例えば、あるアイスを推しているとしたら、競合と比べ、価格は安い or 高い、味のバリエーションは豊富 or 少ない などと考えることができます。
⑤ マーケティングミックス
マーケティングミックスは、推しの価値を届ける方法として、「商品」「価格」「流通」「広告」の4つについて分析していきます。
商品(Product)推しの特徴は何?(例:エンターテイナーなど、魅力と感じる部分)
価格(Price)商品やサービスを買うのにいくらかかる?(例:ファンクラブの料金など、推すのにかかる金額を具体的に)
流通(Place)提供される場所や売り場は?(例:ライブなど、推しと出会える場所)
広告(Promotion)推しを知ったきっかけは?(例:CM、YouTube など)
⑥ 推しの成功要因を整理
ここまでの分析結果をもとに、どこが成功要因となっているかを言語化してみましょう。あなたに認知され、推されていることが”成功”なので、そうなった理由をいくつか挙げてみましょう。「こういう背景があったから、人気が出たのでは?」という推測でも構いません。
⑦ 自分が推しのプロデューサーや会社の社長だったら?
最後は、⑥で考えたことをもとに、自分が推しのプロデューサーや会社の社長だと仮定し、「更なるファンを増やすため、次にどんな戦略を立てるか」を考えてみましょう。
さいごに
マーケティングトレースは、子どもだけで考えると少し難しいところもあるかもしれません。マーケティングトレースに正解はないので、もしお子さんが「わからない」となった場合は、言語化を手伝うなどのサポートをしましょう。自由研究は、取り組む姿勢が大切だと思うので、まずは子どもに自由に考えさせてみてはいかがでしょうか。