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地面に伏せることで救える命:ミサイル攻撃に対処する民間防衛

JSF軍事/生き物ライター
内閣官房・国民保護ポータルサイトより「弾道ミサイル落下時の行動について」

 10月4日、北朝鮮の中距離弾道ミサイルが5年ぶりに日本列島を越えて飛行してJアラートの警報が鳴り響きました。なおJアラートは日本の領土・領海にミサイルが着弾する可能性が生じた際に警報が発せられます。そこまで届かず日本の近海に着弾する可能性がある場合は海上保安庁から船舶向けに警報が発せられます。(どちらも自衛隊が探知した情報を伝達)

 この5年間で北朝鮮からミサイルが発射される度に海上保安庁から警報が発せられていましたが、今回は5年ぶりのJアラートによるミサイル警報が発せられました。まだ戦争にはなっておらず日本領土への着弾とはなりませんでしたが、今行われているウクライナでの戦争で弾道ミサイルや巡航ミサイルが僅か半年間に数千発も使用されているように、現代の戦争では後方であってもミサイルが何時飛んで来るかわかりません。

 政府からは、有事が発生して日本にミサイル攻撃が行われた際に国民がどう対応するべきなのか、避難マニュアルが配られています。

Q4「ミサイルが落下する」との情報伝達があった場合は、どうすれば良いのでしょうか。

A4【屋外にいる場合】

 近くの建物(できれば頑丈な建物)の中又は地下に避難してください。近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守ってください。

【屋内にいる場合】

 できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動してください。

出典:弾道ミサイル落下時の行動 > 弾道ミサイル落下時の行動に関するQ&A - 内閣官房 国民保護ポータルサイト

 これらは世界各国の避難マニュアルでも採用されている定番中の定番の方法です。たとえ核攻撃であっても有効です。第二次世界大戦で広島に投下された原子爆弾でも、ちょっとした遮蔽物の差で生死の明暗が分かれた事例は数多くあったのです。

地面に伏せることで救える命 | イスラエル民間防衛軍

 これは2022年6月に掲載されたイスラエルの民間防衛軍(国防軍の構成組織)が作成した国民避難マニュアルの講習動画「Lying down on the ground can save lives」です。地面に着弾して起爆するミサイルやロケット弾は爆風や破片がやや上方に向かう傾向があるので、低い姿勢で伏せると生き残る確率がかなり高まるという説明です。普段から市街地にロケット弾が頻繁に飛んで来るイスラエルでの実戦的な内容の講習動画となっています。

こうした、「Battle of Britain 」 と 「都市の戦い」から、共通する一つの重要な教訓が得られます。 それは今日のイスラエル国防軍のドクトリンとなっているもので、「ミサイル攻撃によって生ずる死傷者の大部分は、屋外に居る時に発生している」という簡単な教訓です。屋外では、教会や市場等の市民が集まる場所、そして路上での被害がその大部分を占めていたという事実でした。

出典:「湾岸戦争とイスラエルのミサイル防衛」 イスラエル国防軍・前戦史部長 ベニー・ミハルソン大佐(予備役)

※Battle of Britain ・・・ バトル・オブ・ブリテン。第二次世界大戦中に行われたドイツ軍によるイギリス爆撃と迎撃するイギリス軍の空中攻防戦。

※都市の戦い ・・・ War of the Cities。イラン・イラク戦争中に行われた、お互いの都市の民間人を狙った戦闘爆撃機や弾道ミサイルによる戦略爆撃。

 また頑丈な核シェルターでなくても、身を隠すだけでも大きな効果が得られるというのが実戦での教訓です。大型のシェルターは数が少なく自分の近くに在るとは限りませんが、飛行時間が長い大陸間弾道ミサイル(ICBM)ならば退避が間に合う時間の猶予があります。しかし飛行時間の短い短距離~準中距離弾道ミサイルやロケット弾では、退避するための時間の猶予が短く間に合いません。

 そこでイスラエルでは簡易な退避施設を多数用意したり、各家庭にナイロンシートやガムテープを用いて部屋を密閉した簡易な化学弾頭への対抗策「シールド・ルーム」を用意するなど工夫を行っています。

 日本でこれを考えた場合、北朝鮮が日本を攻撃する準中距離弾道ミサイルは約10分間で飛んで来ます。警報が鳴らされてからの猶予は数分間しかありません。すると大型のシェルターを少数用意するよりは、小型のシェルターを多数用意したり、地下鉄の駅や地下駐車場などの民間施設を活用する方法などが有効であると思われます。

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軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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