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「個人データ」提供・公開の拒否感に関する国際比較をグラフ化してみる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

原則実名利用のFacebookの普及をはじめ、ソーシャルメディアの浸透で、プライバシーに関する公開の垣根は、以前と比べて確実に低くなっている。一方でそのような状況だからこそ、個人データに対して慎重に取り扱わねばならないとする考えも根強い。特に情報を提供しうる個人側にとっては、非常にセンシティブな問題となる。先日総務省から発表された「2013年版情報通信白書」では、この個人データ(パーソナルデータ)への秘匿認識に関する国際比較が掲載されており、興味深い動向が見て取れる。今回はこれについて精査していくことにしよう。

↑ どのような場合でも提供・公開したくないデータ(プライバシー性は高くない)
↑ どのような場合でも提供・公開したくないデータ(プライバシー性は高くない)
↑ どのような場合でも提供・公開したくないデータ(慎重な扱いが求められるデータ)
↑ どのような場合でも提供・公開したくないデータ(慎重な扱いが求められるデータ)

双方のグラフで縦軸の区切りを統一し、比較しやすいようにした。概して「慎重な扱いが求められるパーソナルデータ」の方が「提供・公開したくない」と考える人が多いことが分かる。また、プライバシー性が低い個人データに「氏名」が入っているのは多少疑問符がつくかもしれない。しかし同姓同名者が多数いることを考えれば、他のデータとのリンクが無い限り、個人を特定することは難しいため、そのような判断が下されたと思われる。

各国の動向を見ると、2つの特徴が確認できる。1つは「日本とフランスは、各種パーソナルデータについて、他国と比べて公開したくないとの意志が強い」。そしてもう1つは「項目間の秘匿希望度合いの関係(高低さ、つまり重要度、あるいは順位性)では国による大きな差はない」。例えばある国で「メールアドレス」を秘匿したい人が一番多く、別の国では趣味情報を提供したくない人が一番多い、という、項目毎の順位的な違いは無い。

2つめの「各項目間の秘匿重要性さの関係に、国別の差はない」はその内容を見ると、理解は出来る。例えば「プライバシー性が高くない」では、各国で最も高い値を示すのは「会社名」。これは万が一の事態が生じた場合、自分が所属する会社に影響が及び、最悪の場合、職を失する可能性も出てくるのが原因。また所属会社が判明すると、個人は否定しても、第三者からはその会社の代表的な意見発信者、あるいは会社の一部として同一視した上で対応されかねない。「役職」が次に高い値を示すのも、それに近いものがある。「氏名」よりも「会社名」が秘匿したい気持ちが大きいのも、万一の際のリスクを理解した上での判断ともいえる。

また「慎重な扱いが求められるパーソナルデータ」でもっとも秘匿したいのは「行動履歴」。個人の特定だけでなく、他人には見せたくない趣味趣向、日常生活の様式も含めた、個人の全ぼうがあからさまにされる可能性によるもの。要はプライバシーそのものの披露・暴露になりうるからだ。映画「トゥルーマン・ショー」を思い起こしてもらえれば、理解はできるはず。

「行動履歴」に近い値を示す「位置情報」も、それに類する理由である。もっともこちらの場合、自宅をはじめとした特定地点の位置情報を暴露してしまうと、より深刻な事態が起きかねない。一方で個人が了承した上でなら、foursquareのように位置情報を活用して有意義なサービスを提供したり、情報交換・コミュニケーションを行う仕組みも展開されているのが現状。今項目はケースバイケースであると共に、特にこの値が高い(位置情報を秘匿したい人が多い)日本では、他国ほど位置情報サービスが流行らないのも納得できる。

繰り返しになるが、これら「パーソナルデータ」それぞれの項目に対する認識は、各国間で大きな違いは無く、全体的な強度の違いが生じているに過ぎない。情報の公開・秘匿に関する、個々の項目間における順位上の認識は、(少なくとも今回挙げられた6か)国による違いは無いということだ。不思議な話かもしれないが、インターネットを介して各国間で情報の秘匿性・公開性を考える必要があることを考えると、認識が共通化の方向を見せるのも、納得が出来よう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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