Yahoo!ニュース

皇后陛下は令和を生きる日本女性の象徴になるか

山下晋司皇室解説者
宮殿前で米国大統領夫妻を見送られる天皇皇后両陛下 代表撮影/ロイター/アフロ

 御代替わり後、1か月が過ぎた。

 5月は、1日の「剣璽等承継の儀」(皇后陛下は出席しない儀式)、「即位後朝見の儀」 、4日の「御即位一般参賀」、8日の「期日奉告の儀」、22日の「全国赤十字大会」(皇后陛下単独)、27日~28日には国賓として来日した米国大統領夫妻を迎えて「歓迎行事」、「御会見」、「宮中晩餐」、「ご訪問」があった。

 6月は、1日~2日に即位後初の地方行幸啓として愛知県での「植樹祭」に出席された。

 即位後、新天皇皇后に対して批判的な意見が出るのはやむを得ないと思っているが、今のところそういう兆しは見えず、非常にいいスタートを切った。これは、皇后陛下が主だった儀式・行事にお出ましになっていることが要因なのは間違いない。

 5月4日の「御即位一般参賀」には14万人もの人が皇居を訪れた。平成時の「御即位一般参賀」は11万人だったので、関心の高さがうかがえる。もっともこの人数の違いはタイミングの問題もあるだろう。平成時の「御即位一般参賀」は喪が明けた後の平成2年11月に行われた。即位後1年10か月も経っていたことと、この1週間ほど前に、一般参賀と同様に国民が即位をお祝いする場として「祝賀御列の儀」というオープンカーでのパレードがあった。

 今回、当初の予定では平成時と同様に10月22日に「祝賀御列の儀」、10月26日に「御即位一般参賀」となっていたが、「御即位一般参賀」を大きく前倒しして即位直後の5月4日に行った。これは結果からわかるように、いい判断だった。

 初の地方行幸啓となった愛知県でも、天皇皇后両陛下を一目拝見しようという人で沿道などは溢れており、改めて関心の高さをうかがわせた。

 この関心の高さは予想以上だが、女性週刊誌やテレビの情報番組の大げさ感は、いつもどおりである。

「令和流」を強調したい気持ちはわかるが、程度があるだろう。例えば、「通訳なし」や「チークキス」。上皇后陛下も英語はご堪能なので、通訳なしでお話しになっていたし、チークキスもよくされていた。さも今までにはなかったかのような扱いはどうかと思う。

 筆者が国賓接遇時のご様子で感じたことは、皇后陛下の堂々たるお姿である。上皇后陛下からは謙虚、奥ゆかしさといった日本女性の美を感じたものだが、皇后陛下からは堂々とした、力強さを感じた。上皇后陛下が上皇陛下の三歩後ろなら、皇后陛下は天皇陛下の一歩程度後ろか。これは批判でも皮肉でもない。

 天皇の在り方が時代と共に変わるのと同様に皇后の在り方も時代と共に変わるものである。上皇后陛下と共に歩んだ日本女性にとって上皇后陛下は憧れの的であり、見習うべき存在だった。しかし、これからは益々女性の社会進出や活躍が重要になってくる。令和の時代の日本女性、特に働く女性にとって皇后陛下は憧れの的であり、見習うべき存在になっていく予感がした。

皇室解説者

昭和31年 大阪市生まれ、関西大学卒。20数年の宮内庁勤務後、平成13年に退職。宮内庁では昭和63年~平成7年まで長官官房総務課で報道を担当。昭和天皇の崩御・大喪の礼、平成の即位の礼・大嘗祭、秋篠宮殿下の結婚、皇太子(現在の天皇陛下)の結婚などの諸行事を報道担当として経験。平成時代の天皇皇后の中国訪問、米国訪問及び皇太子(現在の天皇陛下)のモロッコ・英国訪問に報道担当として同行。宮内庁退職後は出版社役員を経たのち独立。独立後は、BSテレ東・テレビ東京「皇室の窓スペシャル」の監修のほか、週刊誌・テレビなど各メディアでの解説、記者勉強会の講師、書籍・テレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている。

山下晋司の最近の記事