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ラトビアのドローンメーカー、ウクライナ軍と提携してウクライナで軍事ドローン開発へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

ラトビアのドローン工場ではウクライナから避難してきた29人の女性が祖国防衛のためにドローン生産

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

最近ではロシア軍によるイラン製軍事ドローンによる首都キーウの民間施設やオデーサ近郊のエネルギー施設への攻撃で150万人以上の市民への電力供給が止まってしまったことなどが目立っている。だが、両軍ともに小型の民生品ドローンが監視・偵察だけでなく、爆弾を搭載して攻撃用にも使用されている。

そんななか、ラトビアのドローン製造会社アトラス・アエロスペースが2023年初旬からウクライナ軍と協力して、ウクライナでドローンの開発・研究を行い、いずれウクライナで製造していくことを明らかにしたと米国メディアのディフェンス・ニュースが報じていた。

ラトビアのアトラス・アエロスペースでは、現在でもウクライナに偵察ドローンを提供しており、既に300機以上納品しており、さらに2023年1月には追加で75機を提供する。

またアトラス・アエロスペースではウクライナから避難してきた女性29人がドローン製造の工場で働いている。ウクライナにいた時にはパン工場や図書館で司書として働いていたという女性もいる。祖国に家族や旦那を残してきて1人でラトビアに避難している人も多い。

最初は言葉の壁もあったが、製造の手引きを見ながら覚えていき、現在ではドローン製造に欠かせないスタッフになっている。アトラス・アエロスペースではウクライナ紛争前から民生品ドローンを製造していたが、現在では製造しているドローンの全てをウクライナ軍に供給しており、ウクライナ軍が監視・偵察用に使用している。

ウクライナで製造できるようになれば、輸送コストと輸送の時間がかからないので安価になり、工場で生産されたドローンを戦場ですぐに使用できるのでウクライナ軍にとってのメリットは大きい。また毎日多くのドローンで監視・偵察を行ったり、攻撃をしているウクライナ軍と提携することによって軍事で必要な機能を搭載した軍事ドローンの開発ができるようにもなりうる。

▼ウクライナから避難してきた女性29人が働いているラトビアのドローン工場を紹介するカナダのメディアCBC

ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もドローンを監視・偵察、攻撃で多く使用している。「上空の目」として戦場では欠かせない兵器の1つになっている。上空から敵の様子を探り、敵を発見したら、その場所をめがけてミサイル攻撃を行ったり、ドローンから爆弾を投下したり、神風ドローンが標的に突っ込んでいき爆発している。これほど多くのドローンが戦場で活用されているのは人類の戦争の歴史上でも初めてであろう。

ラトビアのドローン工場で製造されているドローンは戦場で使用されるので軍事ドローンだが、監視・偵察用であり基本的には民生品ドローンと同じである。ウクライナ軍では監視・偵察ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載して攻撃ドローンに改造して、ロシア軍への攻撃に使用していることも多い。民生品ドローンと軍事ドローンの境目がなくなったのもウクライナ紛争の特徴の1つである。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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