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カウントダウンに入っても北朝鮮の衛星発射の日を予測するのは困難! 今回も米国の電波妨害を恐れ攪乱か!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の軍事偵察衛星「千里馬ー1型」(労働新聞から)

 北朝鮮が「27日午前0時から6月4日午前0時までの間」に衛星を打ち上げると通報してきた。前回同様に黄海(西海)からフィリピン方向に向けて発射するようだ。

 日本政府はいつものように発射体など落下物が万一の場合、日本の領海、領土に落下する事態に備え、飛行コースである沖縄などにミサイル部隊を配置し、迎撃態勢を取っている。

 予告初日の27日午前0時は過ぎており、これからいつ何時発射されても不思議ではないが、過去の例からして北朝鮮はすでに発射日を設定しているものと推察される。

 北朝鮮は過去に西側諸国がテポドン(大陸間弾道ミサイル)とみなす「衛星」を何度も発射していたが、例えば、2009年の時は3月13日に「4月4ー8日の間に打ち上げる」と国際海事機関(IMO)に通告し、4月4日に「間もなく発射する」と発表し、翌5日に発射していた。

 また、失敗した2012年4月の時は3月16日に「4月12日―16日の間に発射する」と発表し、13日に発射していた。

 この年の12月に再チャレンジした時は12月1日に「10日―22日の間に発射する」と発表したが、カウントダウンに入った10日になって「技術的欠陥が見つかったので、発射予定日を29日まで延期する」と通告しておきながら、実際には最初の予定期間内の12日に発射していた。

 そして、2016年の時は2月2日に「8日ー25日の間に発射する」と通告しておきながら、急遽6日になって発射予定期間を「7日ー14日の間に発射する」と変更し、翌日の7日に発射していた。

 いずれも予告から3日以内にそれも午前中、主に9時頃に発射されていた。

 昨年から打ち上げが始まった軍事偵察衛星「千里馬―1型」の場合はどうか?

 1回目は5月29日に「5月31日―6月11日の間に打ち上げる」と通告し、5月31日午前6時27分に発射していた。

 この時は、通告のあった5月29日に李炳哲(リ・ビョンチョル)党軍事委員会副委員長がわざわざ談話を発表し、「来る6月にほどなく打ち上げられる我々の軍事偵察衛星1号機」と言及し、混乱させていた。

 2回目は8月22日に「8月24日―31日までの間に打ち上げる」と通告し、24日午前3時50分に発射していた。深夜の発射で、極めて異例だった。

 3回目は11月21日に「11月22日―12月1日にかけて発射する」と通告し、なんと21日の午後10時42分48秒に発射していた。韓国国防部は「22日の未明に発射する可能性が高い」と予測していたが、裏をかかれたというか、意表を突かれてしまった。

 3回目は明らかに国際ルール違反である。フライングしたことについて北朝鮮からは何の説明もなかった。

 韓国のメディアは「22日の天候が不安だったのでその前に発射したのではないか」と伝えていたが、天候を考慮し、発射期間を12月1日まで延ばしたわけで、何も前倒しして発射しなくても、予告期間内に天気の良い日を選ぶことができたはずだ。

 夜の発射準備作業は当然、昼間よりも困難を極める。発射を成功させるには昼間の方が安全で、確実性がある。それにもかかわらず夜に、それも意をを突き,奇襲発射するのは米軍の電波妨害や迎撃を極度に警戒しているからであろう。

 米国はオバマ前政権下の2014年初期から北朝鮮のミサイル技術の進展を遅らせるため「Left of Launch(レフトオブロンチ)」(発射直前攪乱)と称されるサイバー・電子戦能力を増強していた。「レフトオブロンチ作戦」は準備段階でサイバー電子戦を仕掛け、攻撃システムを狂乱させ、失敗させる作戦のことである。

 北朝鮮は2016年から2017年にかけて射程距離3000~4000kmの中距離弾道ミサイル「ムスダン」を計8発発射したが、そのうち7発が爆発するなど、大失敗に終わった。当時、米国のメディアの中には「レフトオブロンチ作戦を極秘裏に行ったからだ」と報じたメディアもあった

 また、米国はオバマ政権下の2009年の時も当時ゲーツ国防長官が北朝鮮の「光明星2号」の発射予告に「発射すれば迎撃も辞さない」と威嚇したこともあった。トランプ政権下の2017年の時もカーター国防長官がNBC放送(1月8日)とのインタビューで「もしそれが我々を脅かすものであれば、また我々の同盟や友人を脅かすならば撃墜する」と北朝鮮に警告したことがあった。

 昨年も軍事偵察衛星を事実上の弾道ミサイルとみなす米インド太平洋司令官が2月24日に「北朝鮮が太平洋に大陸間弾道ミサイルを発射すれば即刻撃墜する」と牽制していた。

 早速、金総書記の代理人である妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長が談話を発表し、「我々の戦略兵器実験に迎撃のような軍事的対応が伴う場合、これは言うまでもなく我々に対する明白な宣戦布告と見なす」と反発していた。北朝鮮の警戒心を窺い知ることができる。従って、北朝鮮は今回も攪乱やフェイントを掛ける可能性が多分にある。

 どちらにしても、天候が最優先だ。雨天は論外で、風速は地上で秒速15mを超えてはならず、地上から高度30km上空でも秒速100m以下でなければならない。

 北朝鮮のここ数日間の天気予報をみると、発射場(鉄山郡東倉里)がある平安北道の天候は、27日は曇りで、28日から29日にかけては晴れとなっているが、5月31日までは台風1号がフィリピンの東を発達しながら北上しているので5月中の発射は気候条件としては不利である。

 慣例通り、数日内に発射するのか、それとも6月に入ってから発射するのか、今回に限っては発射の「Xデー」を予測するのは容易ではない。

参考資料:北朝鮮の軍事偵察衛星は午前中に撮影 夜間撮影はゼロ!すべてが基地など固定対象物で、動く物体もゼロ!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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