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欧州と米国の長期金利の動きに違いが

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ドイツの10年債利回りは昨年10月に3%台を付けたところでピークアウトした。今年8月初旬に2.1%近くまで低下したのだが、ここから再びじりじりと上昇しつつある。27日は2.29%。

 英国の10年債利回りも8月初旬に3.8%割れとなったところがボトムとなって、ここにきて4%台に戻してきている。

 米10年債利回りも8月初旬に3.6%台を付けていったんボトムアウトした。そこからいったん4%台に戻したが、こちらは再び低下基調となっている。27日は3.82%。

 このため足元ではドイツと英国の10年債利回りは上昇基調、米10年債利回りは低下基調となっている。

 これはFRBが9月の利下げの可能性を明確に示唆したのに対し、ECBやイングランド銀行の利下げの行方については不透明感が強いためとの見方ができる。

 FRBは9月に利下げを行えば、2019年以来の利下げとなる。これに対してECBは今年6月に0.25%の利下げを決定していた。イングランド銀行は8月1日に2020年3月以来の利下げを決定していた。

 英国では最近発表された英景気指標を踏まえ、足元では英景気が回復に向かっているとの見方が広がりつつある。イングランド銀行は追加利下げを急がないとの観測が強まりつつある。

 ECBのチーフエコノミストであるレーン専務理事は、インフレ率を目標の2%へ引き下げる取り組みは順調に進んでいると評価した上で、成功はまだ確実でないため、引き締め的な金融政策がまだ必要との見解を示していた(25日付ロイター)。

 また、フランスの政情が意識されたとの見方もある。

 フランスでは社会党と緑の党の両党首が、新内閣発足を巡る行き詰まりを打開するためのマクロン大統領との協議に今後は加わらないと表明。左派、マクロン氏の中道派、極右の国民連合というほぼ互角の3勢力がいずれも連立政権の樹立を否定していることから、首相選出が振り出しに戻った格好となった(28日付ロイター)。

 ここにきて米国と欧州の長期金利の動きに違いが見え始めてきた。すでに利下げをした欧州に対し、これから利下げをするであろう米国の違いといえばそれまでだが、今後は米国も含めて、利下げそのものが慎重になる可能性もあるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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