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テニス界も“次代の旗手”と期待を寄せる20歳の西岡良仁、シード選手を破り3回戦へ:マイアミ・オープン

内田暁フリーランスライター

マイアミ・オープン2回戦 西岡良仁 64 64 F・ロペス[21]

米国フロリダ州で開催中の、グランドスラムに次ぐグレードの大会“マイアミ・オープン”。この大舞台で20歳の西岡良仁(124位)は、第21シードのフィリシアーノ・ロペスを破り3回戦へと進出した。

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柔らかなドロップショットがネット上ぎりぎりを超えて相手コートに落ちるのを見届けると、彼はベンチのコーチたちに向き直り、あごを少し上げ、目で「やってやったぞ!」のメッセージを送ります。

いわゆる、典型的な“ドヤ顔”。

「ちょっと、自分に酔っちゃっていましたかね」

その場面について問われると、西岡は八重歯をのぞかせ、照れくさそうな笑みをこぼしました。

「最後の最後まで、勝てるかはわからなかったので……」

咄嗟に派手なガッツポーズなどが出なかったのは、心身ともに競った戦いの中で、最後まで集中力を切らしていなかった証。勝利の実感が涌き、喜びが体中を駆け巡ったのは、ネットに歩み寄りロペスと握手を交わした時。

「やーべ! 勝ったなー!!」

大歓声に包まれたコートのど真ん中に大の字に寝転ぶと、彼は勝利の味を全身で噛みしめていました。

「対戦したことがないので、イメージがつかめないんですが…」

来たるロペスとの対戦につき、西岡がそう言っていたのは2日前のこと。今大会の予選決勝、そして本戦初戦は過去に勝利した選手との対戦だっただけに、なおのこと“未知”の相手であることを気にしていたのかもしれません。

そのロペスに関する予想が、良い意味で「少し違う」と感じ、同時に「自分の中でプレーのイメージが作れた」のが、第1セットの第3ゲーム。ロペスのサービスを鋭く返し、片手バックから放たれる低いスライスも時に深く、時にアングルで返すことで、相手が得意とするネットプレーを封じれらるとの好感触をつかみました。30-40からのブレークポイントでも、リターンを低く深く返すと、ロペスのフォアはラインを大きく超えていきます。「カモーン!」の叫び声と共に、このとき西岡は「ストローク戦でも負けないな」との自信も手にしました。

蒸し暑さが増していく中での第2セットの戦いでは、西岡は疲れを覚えながらも、相手の疲労も感じとっていたと言います。ストロークで優位に立てる確証を得ていたこともあり、ボールを左右に散らしてロペスを走らせ、体力を削ることに集中しました。第5ゲームを相手のダブルフォールトに乗じてブレークし、しかしすぐに追いつかれ精神的には苦しい展開となるも、試合序盤でつかんだ“勝利へのイメージ”を再現すること徹します。幾度となくドロップショットを打たれ前後に走らされましたが、それでも気持ちを切らすことなく、自らのポイントに変えていく。最後の最後に沈めたドロップショットは、心悔いまでの“お返し”の一撃だったでしょう。

試合直後は喜びを爆発させた西岡ですが、コートを去り、その足でミックスゾーンに来た時には、すでに落ち着き払った表情になっていました。

その背景には、自分と同世代や年下の選手たちが、上のステージで結果を残しているという現状があると言います。

「(アレクサンダー)ズベレフや(テイラー)フリッツ(いずれも18歳)など、年下が勝っている現状があるので。僕も若いと言われているけれど、今年で21歳。若い選手がどんどん出てくるので、周りに負けたくないとなという気持ちはあります」

そのように周囲の活躍に刺激を受ける西岡が、3回戦で当たるのは、ジュニア時代に対戦経験もあるドミニク・ティーム。現在14位につける、同世代の出世頭です。

「今はジュニアの頃とは比べ物にならないくらい強い相手ですが、少ないチャンスをモノにして、1個でも多く勝っていきたいです」

視線はまだまだ、上を、さらに上を向いています。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookから転載。連日、テニスの最新情報を掲載しています。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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