名古屋城から徳川園に至る「文化のみち」。名古屋城の東、武家屋敷が立ち並んだエリアがルーツで、今でも貴重な近代建築物が数々残っています。

その中で、かつて輸出陶磁器商・井元為三郎（いもとためさぶろう）氏の邸宅だった建物が「文化のみち橦木館（しゅもくかん）」です。

敷地には和館、洋館、東西二棟の蔵、茶室、庭園まで、邸宅の全体が保たれています。館内にはステンドグラスや数々の職人技があしらわれ、かつての暮らしぶりを垣間見られる家具や小物など。とても見応えがありますよ。

そんな橦木館ですが、実は文化のみちにある邸宅の中でも、名古屋市有形文化財と景観重要建造物の両方に指定されている唯一の近代建築物でもあります。

館内には井元為三郎氏の生前の写真が飾られていました。16歳の頃、陶磁器業界に就職し、現在の井元商事の前身にあたる井元商店を起業した実業家です。

ノリタケや日本ガイシ、TOTOなど、かつて森村グループと呼ばれた企業群が形成されるほど陶磁器業界が発展した名古屋。井元商店は、名古屋で生産された陶磁器を世界に広める一役を担いました。

井元為三郎氏が全盛の時代に建てられたのが、この旧邸宅・現在の「文化のみち橦木館」なのです。

旧邸宅の中には、今では見ることの難しい近代建築ならではの意匠が見られます。例えば洋館2階のステンドグラス。柄にはスペード・クローバー・ダイヤの3種類がありますが、ひとつ足りないことに気づくはず。

そう、ハートです。ここには「ハート（幸せ）は自分の心の内にあるもの」という井元為三郎氏の考えが表れていると言われています。

また和館の至るところには、お札も貼られていました。先程ご紹介した写真から、ハイカラな印象の井元為三郎氏ですが、実は和のものが好みで、とても信心深いお人柄だそう。

好きではない革靴を履いて、慣れないダチョウに乗っている写真も、頑張って撮影されたのだとか。館内を鑑賞していると、井元為三郎氏の人情味が伝わってくるようです。

こちらは洋館2階のユニットバス。当時は最先端だった設備です。トイレには、かつての東洋陶器（現・TOTO）のロゴが描かれています。

なお館内にはトイレがいくつかありますが、どれも当時から現在も現役で使われています。建築関係の方が訪れると、「まだ使われているんだ！」と感動する方もいらっしゃるのだそう。文化のみち橦木館は、まさに"生きた文化財"です。

こちらは"リアルジブリの世界"と驚かれる方も多い、和館の台所。タイル張りの流し台に、年季の入った食器棚、中央に据えられた羽釜など、まるで時が止まったような空間が広がっています。

しかしこちらも現役なのだとか。タイガーと描かれた古い水筒や、彫刻作品のようなアイロンなど。現代とは一線を画す、昔ながらの家具や小物が至るところに配されているのが面白いです。

また戸の格子からガラスの加工、持ち手の形状や意匠など。建物の随所にこだわりが垣間見られます。手間とお金のかかる貴重なものも多く、現代では手がけるのが難しい職人技の数々です。

また和館の廊下は、ウグイスばりを採用しています。大事な商談中、誰か人が通過したときに、すぐ話をやめられるように考慮したのだそう。このように建築として見応えがありながら、随所に工夫が見られるのが「文化のみち橦木館（しゅもくかん）」の面白さだと思います。

名古屋の穴場エリアにある、知る人ぞ知る「文化のみち橦木館（しゅもくかん）」。名古屋の魅力を再発見できる場所なので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

------------------------------------------

土庄雄平のおすすめ記事がLINEに届きます！

12月18日から配信スタート、毎週月曜日の10時にお届けします。

名古屋のグルメから週末おでかけ情報、ディープなスポットまで盛りだくさん。

ぜひ登録してくださいね♪

<友だち追加の方法>

■下記URLをクリックして友だち登録してください

https://line.me/R/ti/p/%40oa-yuheitonosho

------------------------------------------