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史上最大の下克上へ。ドラフト最下位、全体128番目の鷹新人。「大道グリップ」継承、公式戦「初」を記録

田尻耕太郎スポーツライター
公式戦初安打はt打点を記録したソフトバンク・仲田

 6月30日、ウエスタン・リーグ公式戦で福岡ソフトバンクホークスはタマホームスタジアム筑後で阪神タイガースと対戦した。

板東6回完全。鷹2軍は首位浮上

【6月30日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 1017人】

阪神     `000000001 1

ソフトバンク `00001010× 2

<バッテリー>

【T】●桐敷(3勝1敗)、小野、尾仲、小林――榮枝、中川

【H】◯板東(2勝0敗1セーブ)、SスチュワートJr.(1勝2敗1セーブ)――石塚

<本塁打>

【T】江越3号 【H】リチャード8号

<スタメン>

【T】8江越 5木浪 Dマルテ 3板山 9豊田 6高寺 2榮枝 4遠藤

【H】4伊藤 6高田 8中谷 2渡邉(試合開始直後に石塚へ交代) 3黒瀬 Dガルビス 5リチャード 9笹川 7仲田

”来日初セーブ”をマークしたスチュワートJr.
”来日初セーブ”をマークしたスチュワートJr.

<戦評>

 カード勝ち越しをかけた首位攻防の一戦はソフトバンクが勝利。これで順位を逆転し、0.5差でウエスタン首位に浮上した。

 先発再挑戦となって初マウンドとなった板東湧梧が快投を見せた。教育リーグ以来の先発だったが、毎回打者3人ずつで片づけて6回をパーフェクト投球。ウエスタンで今季2勝目を挙げた。2番手で登板したスチュワートJr.が3回1失点。“来日初セーブ”をマークした。

 打線は五回、育成14位ルーキーの初スタメン・仲田慶介が公式戦初安打初打点となるタイムリーを放った。七回にはリチャードが2試合連発、ウエスタントップを走る8号ソロで追加点を奪った。(了)

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育成14位ルーキー仲田慶介、公式戦初安打&初打点がV打

若鷹スピーチを行った仲田(左)。右は小久保裕紀二軍監督
若鷹スピーチを行った仲田(左)。右は小久保裕紀二軍監督

 公式戦初スタメンの仲田慶介外野手が0-0の五回2アウト三塁でセンターへ先制タイムリーヒット。この一打で公式戦初安打、初打点も記録した。

「本当に貴重なチャンスだったんで、何とか結果を出したいと食らいついていきました」

 仲田は福岡大学から入団したルーキーだ。対戦相手の阪神・桐敷拓馬も大卒1年目と同学年だった。「負けたくない気持ちはありました」。心燃やした理由はそれだけではない。桐敷は支配下指名のドラフト3位。一方で仲田はソフトバンクの育成14位指名。12球団全体で128番目、最後の1人で名前を呼ばれた。

 仲田は「僕は一番下なんで」とその事実を真っ正面から受け止めている。

「一番へたくそだと思っています。そういう選手が這い上がるには、やっぱり誰よりも野球のことを考えて、すべて野球が上手くなるためにと考えて、行動して、生活をしないといけないと思っています」

 根っからの雑草魂だ。福岡市出身のご当地選手。福大大濠高校、福岡大学と地元強豪校を経てきたが、いずれも一般受験で入学した。とにかく練習の虫。仲田は2月に腰痛を発症してつい先日までリハビリばかりの日々だったが、球団スタッフや首脳陣から「やりすぎて怒られる」こともしばしばだったそうだ。

 また、仲田はバットを極端に短く持つ。スイッチヒッターで、先日の三軍戦では右打席に限っては長めに握っていたが、この日は右打席でもグリップを大きく余していた。

「やっぱり食らいついていく姿勢が大事。飛距離では周りに絶対勝てないんで、打率や出塁率で勝負しないと。あと三軍で大道コーチの指導が僕にすごく合ってる。いろいろ教えてもらい、自分もそれでいこうというスタイルを作っています」

 大道典良三軍打撃コーチといえば、現役時代は大柄なのにバットをかなり短く持つ打撃スタイルが特徴的で人気を博した。そのDNAを受け継ぐルーキーがホークスに現れた。(了)

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6回パーフェクト。板東湧梧投手の主な一問一答

ソフトバンク先発の板東
ソフトバンク先発の板東

――久々の先発。

「久しぶりでちょっと緊張したんですけど、初回から三者凡退で行けたし、守備にも助けられた。そこに乗っていけた。あとは、自分の課題に向かってしっかりやろうと思った結果です」

――カーブも有効だった。

「前半はカーブでストライクが取れなかった部分もあったんですけど、そこで無くさないでしっかり使っていこうと(捕手の)石塚とも話をしてサインを出してくれたので、そこで自分のリズムをつかめた」

――長いイニングを投げて感じたこと。

「前回投げた時、自分の投球フォームの部分でつかめてない部分があった。そこをとにかく修正というか、体の使い方の部分で見直す部分があった。そこに向かって取り組んだ結果、今日の試合でここかなとつかめた感じはあります」

――ここ最近、トルネード投法ではなかったように見えた。今日は捻っていた。

「自分の中では変わらないつもりですけど、ちょっと捻れなくなってた時期も今年初めの方にあった。それで2年前の、捻り始めた頃の映像を一昨日ぐらいに見た。それでちょっとリズムをつかめたかなって感じ。右足のリズム。それが取れれば勝手に捻れてるというか、タイミングが合う」

――いいアピールになった。

「立場的にも、結果を出してアピールしていくしかない。自分のできることをとにかくやって、自分の課題を克服していくだけかなと思います。それを続けていくだけ」

※写真はすべて筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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