37歳サイヤング賞右腕バーランダーが取り組んできたフォーム修正と22センチの差
【紅白戦で3回無安打無失点】
昨年のサイヤング賞投手、アストロズのジャスティン・バーランダー投手が現地時間の7月9日に紅白戦に登板し、3回を投げ無安打無失点に抑えるなど、シーズン開幕に順調な調整を続けているようだ。
今年3月に鼠径部の手術を受け、もし予定通りにシーズンが開幕していたら長期間の戦線離脱を余儀なくされるところだった。ところが米国内で新型コロナウイルス感染が拡大し、MLBも活動休止に追い込まれる羽目に。結果的に約4ヶ月遅れの開幕となり、バーランダー投手も無事に戦線復帰することができた。
彼はただ単に、鼠径部の手術から復帰しただけではない。活動休止期間中にフォーム修正に取り組み、更なる進化を目指してきた。MLB公式サイトのブライアン・マクタガート記者が、その詳細を報じている。
【故障予防目的のフォーム修正】
昨年のバーランダー投手は、21勝6敗、防御率2.58、300奪三振を記録し、自身2度目のサイヤング賞を受賞している、しかも自身3度目のノーヒットノーランを達成するなど、MLB在籍15年間で、最も輝かしいシーズンの1つだった。
通常投手がフォーム修正に取り組む場合、調子を崩したり、成績不振に陥ったりするケースが多いはずだ。なぜ絶頂期ともいえるバーランダー投手が、フォーム修正に取り組まねばならなかったのだろうか。
マクタガート記者によれば、その最大の目的は故障予防にあるようだ。
バーランダー投手は前述通り、3月に鼠径部の手術を余儀なくされているのだが、負傷箇所の診察と手術を執刀した医師から、患部には長期にわたり瘢痕組織があったとの説明を受けたようだ。
そのため今後の鼠径部の負傷を予防するために、活動休止期間中により負担の少ないフォーム修正に着手したわけだ。
【リリースポイントを下げる】
バーランダー投手が今回のフォーム修正について、以下のように説明している。
「今回の目標の1つは、数年前のフォームに戻し、以前の球速を取り戻すことだった。いずれにせよ、昨年より改善したかったということだ。とにかく今回は改善できる最高の機会であり、自分の目指したいフォームを考え、作り直すことを目指してきた」
バーランダー投手が指摘するように、確かに彼の球速は数年前より落ちていた。MLB公式サイトによれば、昨年の速球の平均球速は94.6マイル(約152キロ)だったが、2017年には95.3マイル(約153キロ)を記録しているし、デビュー間もない2009年には96.3マイル(約155キロ)を記録していたこともあった。
昨年のフォームは決して合わなかったわけではない。それを物語るように、前述通り素晴らしい成績を残してもいる。だがバーランダー投手の視点では、ずっと持続できるフォームではなく、負傷のリスクが高いものだった。
彼が目指す以前のフォームと昨年のフォームとの明確な違いは、リリースポイントにある。昨年は地面から7フィート2インチ(約2.18メートル)の高さでボールをリリースしていたのだが、それを今年は6フィート5インチ(約1.96メートル)まで下げることに取り組んでいるという。
【わずか22センチから生まれる大きな差】
傍目から見れば、わずか22センチの差でしかない。だがバーランダー投手は「大きな差」だと断言し、それを実現するためにフォーム全体を見直してきた。
「自分は完璧ではないし、まだ自分の目指すところに達していない。だがかなり近づいている自覚はある。今日(の紅白戦)は自分にとって大きな成功だった、すごくいい感じだった」
37歳になっても飽くなき向上心を見せるバータランダー投手。今シーズンはどんな投球を披露してくれるのだろうか。
ちなみにマクタガート記者によれば、バーランダー投手は45歳まで現役を続けることを究極の目標にしているようだ。彼ならまったく絵空事とは思えないのは自分だけではないはずだ。