京都に残る秘境・海住山寺と周辺の魅力
京都府南部の木津川市。かつて恭仁京が置かれたという瓶原(みかのはら)を見下ろす三上山(海住山)中腹に海住山寺(かいじゅうせんじ)はあります。JR加茂駅から徒歩では45分、途中急な坂道もあるので急な登りがある行きだけでもタクシー(1300円程度)を使うのがお勧めです。2019年10月26日(土)~11月10日(日)までは、五重塔内陣が公開され、奈良国立博物館に寄託されていた奥の院本尊の十一面観音、四天王像(いずれも重文)が奈良国立博物館から里帰りして本坊で公開されています。
海住山寺といえばやはり五重塔でしょう。鎌倉時代の1217年の建立から一度も焼失せずに現存し、屋外に立つ五重塔としては17.7mと室生寺に次いで日本で2番目の小ささです。さらに一番下に裳階がついており、この形を見せているのは法隆寺の五重塔とこちらだけになります。また心柱が1階には通っておらず、2階から上まで伸びているのも珍しい造りです。
この期間は、本坊にて公開されている十一面観音や四天王像、さらには狩野派の襖絵、庭園などを楽しんだ後は、境内から少し階段で斜面を登ると、まさにかつての恭仁京があった瓶原を見下ろすことができます。中納言兼輔(紫式部の曾祖父)もこの景色を見て
みかの原 わきて流るる 泉川(いづみがは) いつ見きとてか 恋(こひ)しかるらむ
という百人一首にも採用された名歌を残しています。
境内にはこんな可愛らしい茄子の腰掛も。かつては広大な境内であったことから、山門はかなり離れた場所に現在も置かれており、かつての広大な山寺の寺域を感じることができます。
帰りは、少し急斜面を下りますが、途中から少し西側にそれるとのどかな田舎の風景が続き、さらに鎌倉時代から残っているという水路沿いを歩くと、大切に育てられたコスモス畑が広がります。この時期ならではの素敵な景色です。
このあたりが恭仁京の内裏跡で、ほどなく太極殿址につきあたります。この太極殿址はその後、山城国分寺(金堂)となり、現在はその石碑が立っています。また付近には七重塔の礎石もあり、現在はここに柿の木が植えられて、コスモスと綺麗なコントラストを演出しています。
恭仁京は都として平城京から移されたものの、2年ほどで造営が中止となり、その後、紫香楽宮、難波宮、さらに再び平城京と聖武天皇が悩みながら遷都を繰り返した時期にあたります。わずかな期間ながらも、全国に国分寺国分尼寺の詔が発せられたり、墾田永年私財法が発令されたりしたのもこの都からでした。
こちらからは加茂駅まで20分少々でしょうか。木津川を渡ればJR加茂駅到着です。片道4キロ弱ですので、よかったら海住山寺からの散策、ぜひお楽しみください。