相次ぐアリーナ開業、その背景にあるライブ・エンタテインメント市場の先行き
アリーナの開業や建設発表が相次いでいる。
2023年9月に横浜・みなとみらいに2万人収容の世界最大級の音楽専用アリーナ「Kアリーナ」がオープンしたほか、今後も1万人以上収容可能な会場が立て続けに開業予定だ。
まず今年春には千葉県船橋市に「ららアリーナ東京ベイ」がオープンする。三井不動産とミクシィがタッグを組んで建設を進めている大型多目的アリーナで、収容人数はおよそ1万人。2025年秋には東京・お台場エリアに「トヨタアリーナ東京」が開業する見通し。
川崎市の京急川崎駅隣接エリアでは、2028年開業に向け「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」の建設が進む。DeNAと京浜急行電鉄が進める1万5千人収容のアリーナを軸とした複合施設だ。
首都圏以外でも2025年春に神戸に1万人収容の「ジーライオンアリーナ神戸」、2025年夏には名古屋に1万7千人収容の「IGアリーナ」が開業を控える。
建設ラッシュの背景にあるのがプロバスケットボールBリーグが掲げる「アリーナ構想」だ。2026年には新リーグ「Bプレミア」がスタートし、充実したアリーナ施設が参入の審査基準に求められる。これらのアリーナも各地域のプロバスケットボールチームのホームアリーナとして使用される。
そして、もうひとつの背景にあるのがライブ・エンタテインメント市場の力強い回復と成長だ。ぴあ総研の発表によると、2023年のライブ・エンタテインメント市場は推計で6408億円。コロナ禍の2020年から2022年にかけては大きく落ち込んでいたが、2023年は2019年の6295億円を上回り、過去最高となった。
この先も持続的な成長が続き、2035年には6732億円まで市場が拡大する可能性もあるとみる。振り返れば、コロナ禍前には施設の改修や建て替えに伴う大規模会場の不足が問題視されていたこともあった。これらのアリーナは音楽のライブ会場としても使用される見込みで、各地での開業によって以前にも増して充実した環境が整うことが確実となるだろう。
■音楽市場もコロナ禍から順調に復調
ライブ・エンタテインメント市場だけでなく、音楽配信市場、CDやDVDなどの音楽ソフト市場も好調に推移している。
日本レコード協会の発表によると、2023年の音楽配信売上実績は前年比11%増の1165億円となり過去最高額を更新した。配信売上全体の9割以上をストリーミング売上が占め、Apple MusicやSpotifyなどの定額制ストリーミングサービスの本格的な普及が市場の伸長を牽引している形だ。
また、音楽ソフトの2023年の生産実績は前年比9%増の2207億円となり、音楽配信と音楽ソフトの合計は前年比10%増の3372億円となった。2020年は2727億円と落ち込んだが、そこから3年連続でプラス成長と着実な回復を見せ、過去10年では最も大きな数字となっている。
そんな中、さらなる大規模会場を求める声もある。コンサートプロモーターズ協会関西支部会は「関西地区のアリーナ建設計画に関する声明」を公式サイトで発表した。声明では、大規模公演の増加は首都圏に限定したものであると訴え、その理由の一つとして首都圏のみに新アリーナ建設・開業が集中しているということを挙げている。
「韓国含めた海外アーティストは、開催計画期間が短いという理由により、関西では会場確保すら困難な状況にあります」と現状を説明し、大阪市に建設が予定されている森ノ宮アリーナを現状の1万人収容からさらに規模を拡大したものにするよう検討を要望している。
今後もライブ・エンタテインメント市場は着実な成長が望まれる。各地のアリーナがその下支えとなるはずだ。