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徹底的に戦術を見直し一からチームづくりに着手した三河・鈴木貴美一HCが今シーズンに期すること

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都戦で選手に指示を出す三河の鈴木貴美一HC(筆者撮影)

【シーホース三河が1敗を堅守】

 Bリーグは10月21日にシーズン第4節を実施し、シーホース三河は敵地で京都ハンナリーズと戦い、99-82で勝利を飾るとともに、西地区で唯一1敗を堅守した。

 Bリーグ創設から2シーズン連続で地区優勝を果たした三河だったが、2018-19シーズンはチャンピオンシップ進出を逃し、昨シーズンも新型コロナウイルスの影響で中断されるまで18勝23敗と負け越していただけに、今シーズンの開幕ダッシュは強豪復活を予感させる。

 「(前節から中2日の試合で)相手の対策というのがお互いにできない中で、京都さんはシュートが上手い選手が多いので前半や後半の最初もやられましたけど、それ以上に我々のシュートが上手くいき、ディフェンスから走れたというのが今日の勝因だと思います。

 お互い外国人が合流したばかりで力の差はそんなにないと思いますけど、また(試合で)当たると思いますので、精一杯努力してお互いにいい試合をしたいと思います」

 試合後に淡々と話す鈴木貴美一HCだったが、実は昨シーズンが中断して以降、相当な覚悟を持ってチーム再建に着手していたのだ。

【活動自粛中に過去2シーズン全試合のビデオをチェック】

 不本意に終わった過去2シーズンについて、鈴木HCは以下のように話してくれた。

 「2年前に代表選手の1番、2番の選手(比江島慎選手と橋本竜馬選手)が抜けて、若い選手が入ってくれたんですけれども、なかなか経験不足というところで、いいプレーはたくさんあったんですけれど、大事な試合でなかなか勝てないという状態が続いて…。

 昨年もいい選手は揃ったんですけど、最初はなかなか噛み合わなくて。(そこから)だんだん噛み合ってきたところで、コロナということで中断してしまったんです」

 こうした反省を踏まえた結果、鈴木HCは活動自粛中に、過去2シーズン全試合のビデオをチェックし、改めて現在のチーム状況を徹底的に分析したという。

京都戦でチーム最多の21得点を記録した金丸晃輔選手(筆者撮影)
京都戦でチーム最多の21得点を記録した金丸晃輔選手(筆者撮影)

【看板選手の引退を機に旧スタイルからの脱却】

 そしてその分析を基にして、今シーズンのチームづくりに着手していった。

 「(ビデオチェックで)何ができないのか、何が足りないのかをしっかり分析して、そこからそのためにはどういう選手、外国人選手を獲るだとか、どういう練習に変えなきゃいけないかと…。(実際)これまでとは違った練習方法をしています。

 実は昨年長年うちでやっていたジェイアール・ヘンダーソン(桜木ジェイアール選手)が引退したんですけど、(これまでは)どうしても彼に頼ってしまうようなバスケットになり、一応ハーフコート(・オフェンス)ですけれども、大事なところはワンパターンみたいな感じだったんです。

 今年は広くスペースをとってボールを支配しながら、走りながら、ボールを回しながら、ピック&ロールとかスクリーンを使いながら、全員でバスケットをやろうと…。

 そういった意味で勝つための練習、勝つための戦術をしっかり明確にして、それを選手が嫌がらないで4月の途中から練習に耐えてくれて、そういう結果が出てきたんだと思います」

 鈴木HCが指摘するように、これまでチームの看板選手だった桜木選手がいたことで、彼に頼り過ぎ単調な攻撃になってしまった。その彼の引退を機に、全員で戦うチームへ作り替えることを目指し、今シーズンを迎えているのだ。

 その言葉を裏づけるように、京都戦でも主要スコアラーのダバンテ・ガードナー選手が18得点に終わりながらも、もう1人のスコアラーである金丸晃輔選手のチーム最多21得点を筆頭に、他4選手が2桁得点を記録し、チーム全員でボールをシェアしている。

【外国籍選手の合流で更なる進化を】

 ただ開幕ダッシュに成功した三河だが、チーム状態は決して盤石ではなかった。鈴木HCが話しているように、今シーズンのチームづくりのためにリクルートしてきた外国籍選手が新型コロナウイルスのため合流が遅れた状態で、開幕を迎えていた。

 「最初の4勝というのは外国人がまったく機能していない状態で、ダバンテ・ガードナーだけでやっていたようなものなので、そういった意味では、他の選手たちがオフに分析した練習をしっかり遂行してくれたところだと思います。今はそこに外国人もアジャストし始めてきたという状態です」

 ようやく本来の陣容が揃い、鈴木HCが目指すチームづくりは、ここからが正念場になるだろう。このオフに新しい鈴木イズムを叩き込まれた日本人選手を土台にして、新加入の外国籍選手たちがどのようなスパイスを加えていくことになるのかが、今後のカギを握っているように思う。

 三河が本領を発揮し始めた時、果たしてどんなチームに変貌することになるのか。今から期待したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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