コロナショック:米映画館、9/11を下回る売り上げ。撮影中止もさらに相次ぐ
アメリカの映画館を襲ったコロナショックは、思った以上のようだ。現地時間15日(日)午前中現在、この週末3日間の北米興収は5,530万ドルと、過去22年間で最低の見込みなのである。
これは、9/11テロ直後の5,970万ドルよりも下。1998年10月の5,520万ドルに次ぐ、史上2番目に低い数字だ。1998年や、9/11の起きた2001年に比べ、現在はチケットの値段が大幅に上がっていることを考えると、観客動員数で見たら断然少ないのは明白。また、この推定がなされた時点よりも日曜日の実際の観客数が少なければ、過去最低記録を作ることもありえる。
その可能性は十分にありそうだ。普段ならば活気のある、ハリウッドのアークライト・シネマズに足を運んでみたところ、劇場前の広場は閑散として、まるでゴーストタウンのようだったのである。客が皆無なので、たったふたりだけのスタッフもカウンターにおらず、別の仕事をしていた。
家にこもる人たちが増える中、Disney +は突如、「アナと雪の女王2」と「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」のリリースを早めている。ストリーミングで見られる作品の選択肢が増えるのは会員にとって良いことだが、コロナショックを受けて、Netflixなどストリーミングも、映画スタジオ同様、オリジナル作品の撮影を軒並み中止しており、収束が遅れれば、ここでもやがて目玉作品が供給不足が問題になるかもしれない。
それよりも懸念されるのは、これだけ多くのプロダクションが中止されたことで、現場のクルーの生活が直撃されることだ。毎回高額のギャラをもらうトップスターならば、この状況を乗り切れるくらいの貯金はあるだろうが、大道具、小道具、照明アシスタント、衣装係のアシスタントといった人たちは、たちまち収入が断ち切られる。しかも、再開がいつなのかのめども立たないのだ。
その意味でも、今回は9/11より残酷だと言えるだろう。筆者は9/11の時もL.A.にいたが、あの事件の2、3週間後には、撮影現場取材をやっていた。作品は「メン・イン・ブラック2」で、「政治的な質問は絶対にしないように」と強く言われたし、駐車場に入る時に車の下まで念入りにチェックされたが、それ以外は元のとおりに撮影が進んでいたのを覚えている。
コロナショックで撮影中止を決めた中にも、「当面は2週間のみ」と言っている作品があるし、「マトリックス4」は、今もベルリンでの撮影を続けている。しかし、現段階で、多くの作品の関係者が、不安で眠れない状態にある。先にお伝えしたもの(ハリウッドにも上陸したコロナパニック。公開延期、撮影中止、在宅勤務指示の現状況)への追加を、以下にリストアップする。
コロナショックで撮影一時中止が決まった映画:追加
「The Batman」ロバート・パティンソン主演、マット・リーヴス監督。ロケ場所はロンドン。当面は2週間の撮影停止。
「Jurassic World : Dominion」クリス・プラット主演、コリン・トレヴォロー監督。撮影場所はハワイ。
「The Man from Toronto」ケビン・ハート、ウディ・ハレルソン主演、パトリック・ヒューズ監督。撮影準備段階で、ロケの予定場所はアトランタ。
「Shrine」ジェフリー・ディーン・モーガン主演、エヴァン・スピロオトポウロス監督。ロケ場所はボストン。
「The Nightingale」ダコタ&エル・ファニング姉妹主演、メラニー・ローラン監督。まだ撮影準備段階。
「Samaritan」シルベスタ・スタローン主演、ジュリアス・エイヴァリー。ロケ場所はアトランタ。
「The Last Duel」マット・デイモン、ベン・アフレック主演、リドリー・スコット監督。ロケはアイルランドへ移動したところ。
「Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings」トニー・レオン、オークワフィナ出演。デスティン・ダニエル・クレットン監督。ロケ場所はオーストラリア。
「The Little Mermaid」ハル・ベイリー主演、ロブ・マーシャル監督。ロケ場所はロンドン。
「Nightmare Alley」ケイト・ブランシェット、ブラッドリー・クーパー出演。ギレルモ・デル・トロ監督。ロケ場所はトロント。
「Peter Pan & Wendy」エヴァー・アンダーソン主演、デビッド・ローリー監督。
「Shrunk」ジョシュ・ギャッド主演、ジョー・ジョンストン監督。
ほかにテレビ/ストリーミングでは新たに「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」「Empire/成功の代償」「ストレンジャー・シングス」「グレイス&フランキー」「POSE ポーズ」「Red Notice」などが中止になった。
*写真はすべて筆者撮影。