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乳がん患者が増加中!実は男性も乳がんになる!

柳田絵美衣臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士
(写真:アフロ)

■乳がんの現状

日本では乳がんに罹患する女性が急増しています。乳がん罹患女性は30歳代から増加し始め、40歳代後半から50歳代前半がピークとなります。罹患率の増加と同様、乳がんによる死亡率も年々増加傾向にあります。2017年のがん罹患数予測では、乳がんに罹患する女性は約9万人、死亡者数は1万4千人と予測されています。国立がん研究センターが2017年に公表した統計では、生涯で乳がんに罹患する確率は約9%、つまり11人に1人の割合となるといわれています。

2017年のがん統計予測

出典:国立がん研究センター がん情報サービス

最新がん統計

出典:国立がん研究センター がん情報サービス

しかし、日本医師会が2015年に公表した統計では、40~69歳までの女性での乳がん検診の受診率は34.2%であり、大腸がんや肺がんの検診に比べると低い数値です。

データで見るがん検診 日本のがん検診データ 乳がん検診

出典:日本医師会

治療の進歩により、5年生存率は90%以上であるため、早期発見をして適切な検査や治療を受ければ、乳がんに罹患しても命を落とさない可能性が高くなっています。

■男性の乳がん

また、男性での乳がん罹患は非常に稀ですが、乳がん全体の約1/100が男性の乳がん罹患者数となります。女性に比べて患者がとても少なく、がんの発見が遅れる場合もあります。

男性の乳がん患者 交流会で語り合う

出典:東京新聞

しこりがあると感じたら、すぐに病院へ。

■乳がん検診の検査項目

1.視診・触診

乳がんの専門医が乳房を指や手で触り、しこりや首や脇下のリンパ節の腫れなどを調べます。

2.マンモグラフィ(乳房X線検査)

乳房を板の間に挟み圧迫し、広く伸ばした状態でX線撮影をします。少し痛みを伴うこともありますが、早期発見に適しています。放射線の被ばく量は自然界の放射線レベルと同程度であるため、心配はありません。

3.超音波検査(乳腺エコー検査)

乳房に超音波を当て、その反射波を画像化することで、乳房内の様子を観察することができます。痛みはなく、放射線被ばくがないため、妊娠中の女性でも安心して受けられます。

4.病理検査

しこりがあった場合、そのしこりが悪性か良性かを確定診断するために、しこり(病変部)に針を刺して組織・細胞を採取し、その組織や細胞の形状などを観察します。観察し、種類や性質を調べることで、適応する薬剤がわかります。

■乳がん検診を受けるには

市区町村による住民健診職場での検診などによって自己負担額は異なります。各自治体の検診を受ける方は、各自治体のがん検診ホームページまたはがん検診窓口へお問い合わせください。

がん検診を受けるには 各自治体のがん検診窓口/都道府県

出典:日本医師会

「受けてみようかな?」と思い立ったら、すぐ連絡を。

■手術でがんを取り除く

1.乳房部分切除術(乳房温存療法)

がんとその周辺を部分的に切除する方法です。再発を予防する目的で放射線治療をおこなうことが原則となります。しこりが大きく、この方法が適応にならない場合でも薬物療法でしこりを縮小させることで部分切除術がおこなえる場合もあります。

2.乳房切除術(全摘術)

胸の筋肉以外のすべての乳房を切除する方法です。複数のがんが同じ乳房内の離れた場所にある場合やがんが広範囲に広がっている場合、放射線療法がおこなえない場合などでおこなわれる方法です。乳房を全摘しても、乳房再建で乳房を新しく作り直すことができます。

乳がん

出典:国立がん研究センター

人工乳房に保険適用 7月から、乳がんで全摘出対象

出典:日本経済新聞

現在では、乳房再建は保険適応となっています。

■乳がんになりやすい人

1、乳がんの7~8割は女性ホルモン(エストロゲン)の働きが影響するため、初潮が早い人閉経が遅い人

2、妊娠、出産、授乳回数が少ない人

3、エストロゲンは脂肪組織から合成されるため、閉経後肥満の人

4、アルコール

5、遺伝性   1割

6、良性乳腺疾患の既往歴がある人

データで見るがん検診 乳がんの検診 乳がんの原因

出典:日本医師会

気になる人はセルフチェックを!

■セルフチェック

乳がんは「体の外側から触ることができる」数少ないがんです。月に1回セルフチェックを実施しましょう。

1. 乳房を鏡でしっかり見る

・左右の大きさの違いはないか?

・腕を上下させたり、上半身を左右に回転させたときに、乳房にくぼみや乳頭に凹み皮膚に異常がないか?

乳頭に湿疹がないか?乳頭からの分泌物がないか?

2. 石鹸の泡を利用して滑りやすくしてから触る

・指先の腹側で静かに乳房を圧迫し、しこりがないか調べる

・乳頭を中心に円を描くようにするか、肋骨に沿って外側から内側へ動かすように触る

・チェックする場所は、鎖骨から乳房の下、わきの下から胸骨まで触る

2017年度版リーフレット「乳がんのセルフチェック」

出典:公益法人 日本対がん協会

自分でチェックできる乳がん。早期発見しやすいがんです。

■超音波検査とマンモグラフィを受けてみた

検査をする側の人間は、検査を受ける人の気持ちや痛みを知る必要がある!と思い、検査を受けてみました。

◇超音波検査◇

乳がんの超音波検査では、まず検査着に着替え、ベッドの上で仰向けになります。次に、乳房の全表面に透明なゼリーが塗られます。これは、超音波を体内に透過させやすくするためのものです(検査終了後は綺麗に拭き取れます)。ゼリーを塗った場所に超音波を発生するプローブを当て、動かします。痛みはありません。熱くもありません。仰向けに寝るだけです。

以上です。簡単です。

◇マンモグラフィ◇

マンモグラフィでは、まず上半身の衣類を脱ぎ、装置の前に立ち、撮影台の上に乳房を乗せます。すると、台と透明な板で乳房を挟むように圧迫されます。思い切り挟まれます。多少痛みを感じる人もいるでしょう。しかし乳房が薄くなればなるほど、鮮明に内部を映し出せますので、少し頑張ってみましょう。私の場合は、痛みはありませんでしたが・・・撮影台の高さが合わず背伸びをしながら受けたため、全身震えていました。高さはしっかり合わせてもらいましょう。

実際、検査を受けてみて思うことは「想像していたよりも、痛くなかった。怖くなかった。」ということです。1回経験してしまえば、どのようなことをするのかが分かります。分かってしまえば、次回からは怖くないですよね?最初の1回だけ、勇気を出して受けてみてください。

臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士

医学検査の”職人”と呼ばれる病理検査技師となり、細胞の染色技術を極める。優れた病理検査技師に与えられる”サクラ病理技術賞”の最年少、初の女性受賞者となる。バングラデシュやブータンの病院にて日本の病理技術を伝道。2016年春、大腸癌で親友を亡くしたことをきっかけに、がんゲノム医療の道に進み、クリニカルシークエンス技術の先駆者として活躍。臨床検査専門の雑誌にてエッセーを連載中。講演、執筆活動も多数。国内でも有名な臨床検査技師の一人。現在、米国にある世界トップクラスのがん専門医療施設のAI 病理ラボ研究員として奮闘中。

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