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サントリー沢木敬介監督、2季ぶり公式戦黒星に「弱いから負けたんですよ」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨季日本選手権決勝後の歓喜。今年は。(写真:アフロスポーツ)

 日本最高峰トップリーグは中断前最後となる第9節を迎え、前年度王者のサントリーが2季ぶりの公式戦黒星を喫した。

 10月21日、埼玉・熊谷陸上競技場。一昨季まで3連覇したパナソニックに10-21と敗戦。序盤は大外のスペースへ効果的なパス、キックを通しリードを保つも、要所での反則が響き10-11とビハインドを背負ってハーフタイムを迎える。後半も終始攻め込んだが、パナソニックの組織防御を前に無得点。対するオープンサイドフランカー、デービッド・ポーコックのジャッカル(密集の球に絡み、そのまま奪おうとするプレー)に手を焼いた。

 試合後、就任後2年目にして初の負けを経験した沢木敬介監督と流大キャプテンが会見した。

 以下、会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

沢木

「はい、皆さん、お疲れさまでした。悔しいですね。パナソニックさんよりサントリーの方がチャンスの回数はあったと思います。それを仕留めきれなかったのは自分たちの未熟さ。まだまだ弱い。ただ、これから1か月でどれだけチームが成長できるかは楽しみですし、チャレンジしたいです」

「ありがとうございます。サントリーがまだまだ弱く、パナソニックさんが強い。チャンスはあったんですけど、そこで仕留めきるスキル、判断がまだまだ未熟で、こういう結果になりました。負けたことは悔しいですが、この負けを大事なものにして、チーム全体で共有して…。自分たちがチャレンジャーだと再認識した試合で、自分たちが何をしなきゃいけないかを再認識した、原点に立ち返るいい機会になりました」

――対するポーコック選手のターンオーバーには苦しんだようですが。

「実際、素晴らしいジャッカルをしていました。ただ、僕らはその対策をしていて、その対策ができていた時はジャッカルされていないと思います。それを忘れる、ではないですが、ソフトなチョイスをしたり、やろうとしたスキルを遂行できていない時はすべて(ボールを)獲られている。まだまだ練習できていなかったのかなと思います」

 事実、試合開始からサントリーのランナーへのサポートは粘っこい印象を与えた。ポーコックら接点の球へ手を伸ばそうとする選手へ身体を当て、低い位置から持ち上げ、倒していた。流の見立てによれば、このような働きがおろそかになった瞬間をポーコックが逃さなかったということだ。

――この試合に向けどんな準備をして、それがどう反映されたのでしょうか。

「相手のキープレーヤー、フミさん(スクラムハーフの田中史朗)とバーンズ(スタンドオフのベリック・バーンズ)にしっかりプレッシャーをかける、と。フミさんのところはラインブレイクもされましたし、あまりプレッシャーになっていなかったんですけど、バーンズにはハイボールを上げてそこへスマッシュするとかして、それにバーンズも嫌がっていたと思う。スペースはたくさんあったんですけど、この天候(大雨)もあって仕留めきれなかったのが、上手くいかなかったところです」

――プランそのものは上手くいったのか。

沢木

「前半は自分たちがやろうとしているゲームプランは、ある程度できた。ただ、後半のモールで何回も(相手の)ペナルティーを取れなくて。あそこでレフリーの特徴、傾向を理解して、モール組むのがベストなのか、ボールを動かすのがベストなのかとか、細かいけど、そういう判断も必要になってくる。その辺も含め、修正したいです」

 今回のような接戦ではなおさら、相手に攻撃権を譲る反則は避けたいところだった。この日のペナルティーの数はパナソニックが「6」でサントリーが「8」とほぼ変わらなかったが、自陣深い位置で吹かれた笛の数はどうだったか。

 パナソニックはピンチでこそ順法に徹し、判定には異議を唱えなかったという。それに対し沢木監督は、担当レフリーの癖を読む力を問題視したのだろう。それが「レフリーの特徴、傾向を理解して…」との発言に繋がったか。

――「前半は」と仰る通り、大外のスペースを攻略する仕掛けは見られました。

沢木

「パナソニックさんのディフェンスシステムの特徴を見ても、必ず空くスペースはあるんです。そこを自分たちでしっかりと分析して、前半はそこにボールを運べた。後半も同じようなスペースが空いていたんだけど、プレッシャーに負けて正しい判断ができなかった」

――ペナルティーマネジメントについては。

沢木

「それはもう、レフリーが一番。僕らがレフリーにしっかり従って、やるしかない」

 やや、苦笑。

――2シーズンぶりの公式戦黒星についてはどう感じますか。

沢木

「弱いから負けたんですよ。ただね。人間は失敗して成長するものだと思うんです。この負けをプラスに変える。もう1回スタンダードを見直して…。負けなきゃ気付かないことは絶対にある。そこにきょうは気付けたと思います。これまで以上にしっかりとハングリーにチャレンジしたいと思います」

――パナソニックと再戦する場合は。

沢木

「スペースにチャレンジする自分たちのラグビーをやる。パナソニックさんのラグビーとサントリーのラグビー。どちらが信じ切ってやれるかだと思う。強いパナソニックさんに対して、しっかりとチャレンジしていきたいと思います」

「まず、僕らはどこにも簡単に勝てるわけではない。ウィンドウマンス明けから勝てるようにしっかりいい準備をしたいです。また、きょう負けたので是非もう1回パナソニックさんとやりたいですし、その時はもう1回、僕らのやりたいスペースを攻めるラグビーをできるよう、意識して、練習して…。きょうの後半、僕らがアタックで人数(立っている選手の数)を減らすなか、向こうの人数が揃っていた。ハードワーク、自分の意志で走るといったことをもう1回、チームに植え付けないといけない。僕から率先してやっていきたいと思います」

 ボスの「どちらが信じるか」は、えてして勝敗の根幹をなす。船頭の「向こうの人数が揃っていた」は、チャンスを仕留めきれなかった理由を端的に捉えた言葉だ。「人間は失敗して成長する」の先に、どんな結末が待っているだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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