『鬼滅の刃』、Aimerが歌うオープニングテーマ「残響散歌」に見る物語とのリンク
12月5日、テレビアニメ『鬼滅の刃』遊郭編の放送がスタートした。
初回放送の第1話「音柱・宇髄天元」の平均世帯視聴率は9.2%(関東地区)。その内容もさることながら、Aimerが歌う主題歌も大きな反響を集めている。
遊郭編は、劇場版とテレビアニメ版で描かれた「無限列車編」に続くストーリー。第1話は約1時間の放送で、冒頭は煉獄杏寿郎の死の場面からスタート。竈門炭治郎らが音柱の宇髄天元と共に鬼の棲む遊郭に向かうラストの場面に続いて、オープニングテーマの「残響散歌」が流れる展開を見せた。
エンディングテーマ「朝が来る」の公開は次週に持ち越されたが、放送翌日の12月6日には「残響散歌」が先行配信リリース。来年1月12日には両曲を収録したシングルCD『残響散歌/朝が来る』が発売予定だ。
「残響散歌」の作曲は飛内将大、編曲は玉井健二・飛内将大。作詞は「aimerrhythm」という名義でAimer本人が手掛けている。ダイナミックなピアノと派手なホーンセクションによるイントロから始まる、疾走感に満ちた一曲だ。アグレッシブなサウンドの上でAimerのハスキーボイスが響き、サビの〈どんなに暗い感情も どんなに長い葛藤も 歌と散れ 残響〉というフレーズが強力なフックとなっている。
遊郭編には十二鬼月・上弦の陸の鬼の兄妹である堕姫と妓夫太郎が登場する。詳述は避けるが、その過去に抱える”暗い感情”や”葛藤”に寄り添うような一節にも思える。
アニメで聴くことのできるのは89秒のバージョンだが、フルバージョンで聴くことのできる曲後半、駆け上がっていくようなギターの轟音に乗せて歌う〈選ばれなければ 選べばいい〉というフレーズも印象に残る。物語で描かれる堕姫と妓夫太郎、そして炭治郎と禰豆子の兄妹愛を踏まえて聴くと、より一層味わいが増す言葉だ。
■LiSAからAimerに受け渡されたバトン
『鬼滅の刃』の主題歌といえばLiSAのイメージを持つ人も多いだろう。これまでも「竈門炭治郎 立志編」OPテーマの「紅蓮華」、劇場版「無限列車編」主題歌の「炎」など、数々の印象的な楽曲を歌ってきた。
「遊郭編」に先駆けて放送されたテレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編でも、OPテーマ「明け星」とEDテーマ「白銀」を担当している。
今回の遊郭編がAimerにとっては『鬼滅の刃』主題歌への抜擢となるわけだが、公式発表を受けてのツイッターのコメントで、LiSAとAimerは「歌い繋ぐ」「バトン受け取る」という言葉で意気込みを表明している。
共にデビューは2011年。LiSAとAimerの両者は『鬼滅の刃』を手掛けたアニメーション制作会社ufotableの代表作である『Fate』シリーズでも主題歌を歌っており、縁も深い。そのufotableが運営に携わり2018年5月に徳島県で開催された〈マチ★アソビ presents「唄の降る夜」コンサート~第二夜~〉では共演も実現している。
両者の言葉からは、こうしたキャリアを経て互いにリスペクトし合う関係性も見て取れる。
■『鬼滅の刃』とAimerのキーパーソン、梶浦由記
そして、キーパーソンと言えるのが作曲家の梶浦由記だ。
梶浦由記はこれまでもAimerの代表曲の数々を手掛けてきた。中でも、劇場版『「Fate/stay night [Heaven's Feel]」』三部作の主題歌となった「花の唄」、「I beg you」、「春はゆく」の3曲では、物語と音楽の深い結びつきを体現している。
さらに、2021年4月にリリースされたアルバム『Walpurgis』の収録曲「wonderland」も梶浦由記の書き下ろしによるものだ。Aimerの憂いを帯びた歌声を活かしたミステリアスな楽曲に仕上がっている。
これまで数々のアニメ作品や映画、ドラマの劇伴を手掛けてきた梶浦由記は、『鬼滅の刃』の音楽においても大きな役割を果たしている。
劇伴は梶浦と椎名豪が担当し、陰影を巧みに表現する壮大で幻想的なサウンドで、ダークファンタジーの作品世界を彩ってきた。「炎」や「明け星」や「白銀」などLiSAが歌ってきた主題歌の作曲も担当している。
音楽においても深い魅力を持つ『鬼滅の刃』。楽曲の背景にあるこうしたクリエイターとボーカリストの結びつきも特筆すべきポイントと言っていいだろう。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】