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バット・フリップではなくボール・フリップ!? これは暗黙のルールを破る行為では…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ワンダー・フランコ(タンパベイ・レイズ)May 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月3日、遊撃手のワンダー・フランコ(タンパベイ・レイズ)は、ワンバウンドしたブライアン・レイノルズ(ピッツバーグ・パイレーツ)の打球を捕ると、それを右手に移し替え、小さく跳ね上げた後、再び手にして一塁へ送球した。

 バット・フリップならぬ、ボール・フリップといったところだ。

 場面は、7回表の2死三塁。レイズが5点リードしていた。

 レイノルズは、鈍足の選手ではない。スイッチ・ヒッターで、この時は左打席に入っていた。ただ、打球が速く――スタットキャストによると、初速は103.2マイル――フランコのフリップがあっても、セーフにはならなかった。

 ボールを捕ってから送球する前にフリップする野手は、まずいない。なので、そうすべきではないという暗黙のルールもないはずだ。けれども、相手の選手に対するリスペクトを欠く行為、と看做される可能性はある。

 下のツイートにあるように、試合後、記者に訊ねられたレイノルズは「見たよ。感心しないね」と語ったという。

 一方、フランコに、相手を見下す意図はなかったようだ。MLB.comのアダム・ベリーによると、フランコは「練習で時々そうしているんだ。たまたま、そうなった」と説明したという。

 バット・フリップと違い、今後、ボール・フリップが広まることはないだろう。そのせいで、送球が遅れ、アウトがセーフになりかねない。

 この直後、7回裏の先頭打者として打席に立ったフランコは、ホームランを打った。バットを大きく放り投げはしなかったが、こちらも、軽くフリップした。打球は、センターを守るレイノルズの頭上を大きく越えていった。

 なお、フランコは、メジャーリーグ3年目の22歳だ。2021年のオフに、11年1億8200万ドル(2022~32年)の延長契約を手にした。レイノルズは、メジャーリーグ5年目の28歳。先月下旬、8年1億675万ドル(20132023~30年)の延長契約を交わした。

 フランコの契約については、こちらで書いた。

「6月にメジャーデビューした20歳の選手が「11年1億8200万ドル」の契約を得る。それでも安い!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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