【京都市中京区】鴨川の若アユがんばれ! 賑わう三条大橋で極上品の伝説のアユ復活に住民ら魚道を設置!
木製高欄もリニューアルされ、ゴールデンウィークで賑わう三条大橋から鴨川を2023年4月29日に眺めていると、大勢の人たちが川に入ってなにやら作業中です。子ども連れの人たちもいて、専門の土木工事でもなさそうです。川べりに降りて近づいてみました。
鴨川にあった段差は落差工というのだそう。 木造製の仮設魚道「AYU FISH WAY」の設置中でした。ここ十数年来、これまで、今井堰、四条落差工、三条落差工、丸太町落差工、荒神口落差工と5つの落差工に毎年設置していると言います。 作業を指導されていた京都大学防災研究所水資源環境センターの竹門康弘准教授にお話をお聞きしました。
かつて鴨川源流近くの雲ケ畑あたりまで上がってきた鮎は極上品でした。長良川や四万十川など他県の流域で、友釣りで釣るアユの漁師でさえ、自分の食べるアユは鴨川で求めるほどでした。
天然アユは冬は大阪湾で暮らし、夏は京都の川で暮らします。アユもまた魚の習性として、おいしいごはんとなる自然石に生息する上質の藻を求めて、上へ上へと、はるばる50キロの道のりを経て鴨川へやってくるのです。北の清流で暮らすほどアユは子をたくさん産めるようにすくすく育ち、大きいものは30センチを超えるものも。
しかし近年、このアユの遡上を妨げる事態が起きていました。洪水を防ぐための堰や高さが1メートルを超える落差工が造られたためでした。アユを始め魚たちが上がれなくなってしまったのです。伏見区下鳥羽の龍門堰辺りから遡上出来ずにうろうろし、飛び跳ねるアユの姿を見かけるようになります。
こういった事態を改善してアユたちを救おうと立ち上がったのが、鴨川・桂川・宇治川・木津川を含む淀川流域の自然の恵みを豊かにし、これを活かしていくことに賛同する関係団体・個人で構成されたネットワーク「京の川の恵みを活かす会」のメンバーたちでした。流域の漁協、大学等の研究者・専門家、NPO、企業などのメンバーが関連する行政として府の水産課や市の農林企画課・環境管理課などと連携しながら活動に取り組んでいます。
「AYU FISH WAY」の考案・設計者である会の副代表の中筋祐司さんは、「まず、アユが使ってくれるか、増水に耐えるかを考え、みんなで手作りできるような魚道にしています。さらに、実際のアユの生態に合わせて、魚道を落差工直下に横向きにすることによって、アユが魚道の入り口をみつけやすくなるようデザインしています。その結果、今では出町柳のデルタ付近でも天然アユの遡上が確認できるようになりました。」と話します。
2022年5月から7月の京都市職員によるアユの遡上調査によると、三条落差工の魚道を通過したアユの数は約800尾で、実際にはその数倍ものアユが遡上したと推定されます。魚道の木材は京北の森林組合で切り出した北山杉の廃材を、専門業者が組み立てて運んできます。
竹門准教授は、「この10年来の取り組みで、だんだん知名度も上がって、アユの遡上をカウントするメンバーを始め、協力してくれる個人や団体も増えてきました。この流れを活かして、さらに北上させてやりたいですね! 」と今後の意気込みを語ってくださいました。
鴨川にはオイカワやカワムツ、カワリヌマエビなど他にもたくさんの魚たちがいますが、湧水のある水温の低い場所に避難する様子が見られるなど、地球温暖化の影響がすでに出ています。アユが元気に住み続けられる取り組みを通じて、豊かな鴨川の自然が復活することを願います!
「京の川の恵みを活かす会」(外部リンク)三条落差工場所 京都市東山区大橋町 問い合わせ先 京都市産業観光局農林振興室農林企画課 075-222-3351