ディズニー対ユニバーサル 新アトラクション競争の行方
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン来年2月オープンの新エリア公開
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に来年2月4日オープンする、任天堂のゲームの世界を再現した新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」が公開された。目玉となる、世界的な人気ゲーム『マリオカート』をテーマにしたライドアトラクション「マリオカート ~クッパの挑戦状~」は、専用ヘッドセットを着用し、AR(拡張現実)やプロジェクションマッピングなどの最新映像技術や、スチームなどの特殊効果を組み入れ、ドリフト&スピンしながら、マリオやルイージたちのカートと白熱のレースを繰り広げる。アイテムボックスからゲットした甲羅を投げて敵を撃退する機能も備える。人気キャラクター「ヨッシー」のライドアトラクション「ヨッシー・アドベンチャー」や、テーマレストラン、ショップなども登場する。
そして、もうひとつの目玉といえるのが、スマホアプリと連動させる新開発のリストバンド「パワーアップバンド」を装着して楽しむアトラクションである。「パワーアップバンド・キーチャレンジ」は、「クッパJr.」に盗まれたゴールデンキノコを取り返すため、エリアのあちこちにいる敵を倒し、3つのカギを集め、バトルを繰り広げる。また、エリア内に設置された「ハテナブロック」を叩くと、マリオのゲームと同じようにコインを集めることができる。そのランキングを競い合い、時に他のゲストと協力し仲間と一体感を得ながら楽しむことができるという。
さまざまな最新機能が活かされ、アトラクションの楽しみ方の新たな地平をひらく可能性を感じさせる。
ディズニーテーマパークの新アトラクションの魅力
一方、東京ディズニーランドに今年9月オープンした新アトラクション「美女と野獣“魔法のものがたり”」は、他のディズニーテーマパークにはない日本オリジナルであり、ストーリーをエリア全体で体験できるよう工夫されており、出来映えはすばらしい。しかし、アトラクション単体としては、ストーリーの再現性は優れているが、海外のディズニーテーマパークの最新アトラクションと比べ、参加体験性がやや低い。東京ディズニーシーに昨年7月オープンした「ソアリン:ファンタスティック・フライト」も、テーマの活かし方は優れているが、海外のディズニーテーマパークに先行導入されたアトラクションの焼き直しに感じ、技術的な目新しさは見られない。
例えば、米国「ウォルト・ディズニー・ワールド」の「ディズニー・アニマル・キングダム」にある映画『アバター』をテーマとした新エリアのアトラクション「アバター・フライト・オブ・パッセージ」は、3D映像を駆使しながら、物語に登場する翼竜に似た生物にまたがって大空を駆け巡る体験ができる。特に、またがった足から伝わる生物の鼓動と、場面にあった臭い・風・水などを駆使した臨場感は感動的である。
同じく、米国のディズニーランドとディズニー・ハリウッド・スタジオに昨年導入された新エリア「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」の新アトラクション「ミレニアム・ファルコン:スマグラーズラン」は、コックピットに同乗した6人が、それぞれパイロット、ガンナー、エンジニアの役割に応じて指示されたように操作し、チームが協力して任務を達成する。
ディズニーテーマパークのアトラクションはストーリーの再現性が重視されやすいが、最新アトラクションには参加体験性の高い、新たな楽しみ方を広げるものが出てきている。そして、その要素は、ショップやレストランにも広がっている。さながら、ディズニー対ユニバーサルで、高度な新アトラクション競争を繰り広げている様相である。
レゴランドの新アトラクションにみる重要な魅力要素
だが、投資規模は小さく、最新技術を導入しているわけでもないが、「レゴランド・ジャパン」に昨年7月にオープンした新エリア「レゴニンジャゴー・ワールド」も注目に値する。レゴランドは、開園直後の集客に苦戦し、マイナスイメージが付いてしまった感はあるが、レゴランドのポテンシャルを侮ってはいけない。見方によっては、レゴランドのアトラクションはディズニーやユニバーサルのアトラクションに負けない魅力を備えている。
新エリアは、忍術修行をコンセプトに、アトラクション「フライング・ニンジャゴー」、「ロイド・スピン術・スピナー」、「カイ・スカイ・マスター」が、いずれも自分で操作して楽しめるよう工夫されている。技を修得してレベルアップを目指すことができ、乗るたびに異なる動きを体験できるなど、何度も乗りたくなる魅力を創出している。
特に「フライング・ニンジャゴー」は、地上22メートルまで上がり時速50kmで旋回しながら、2枚の翼を自分で操縦して機体を傾けることができ、コツをつかめば360度回転させることができる。回転させるためには何度も乗車して操作方法を習得する必要があり、上達すると何十回と回転させることができるようになる。類似アトラクションは2016年7月に「富士急ハイランド」や「さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト」にも導入され、機体を回転することができれば賞品がもらえる小学生向けのイベントも開催された。
「カイ・スカイ・マスター」は、4人乗りのライドを操縦して、ターゲットを撃ち得点を競うアトラクション。ライドの前列がターゲットを撃つ銃を、後列がライドを上下させるレバーを操作し、たがいに協力することで、点数を競う仕組みを取り入れている。既存アトラクション「レスキュー・アカデミー」も体を動かしながらチームワークを活かし、消防車で火事を鎮火させることを競う楽しみ方を提供している。
2018年6月にオープンした「ビルド・ア・ボート」のように、レゴで創作したものを実際に試して遊べるアトラクションは他にも複数存在しており、今後も大いに発展する可能性を秘めている。
テーマパークのアトラクション発展の方向性
これらから、テーマパークの最新アトラクションの魅力づくりにおいて、いくつかキーとなる要素がみえてくる。臨場感や没入感はますます向上する。特にARやプロジェクションマッピングは、まだまだ活用を広げることができる。チーム協力による一体感と達成の仕掛けは多様性を増すだろう。ライドアトラクションの操作機能もできるだけ組み込まれる方向に進むだろう。スキルアップや成長により楽しみ方が向上する工夫も発展の余地がある。何らかのものを創作するなど、クリエイティブな機能も加わり、それを組み合わせた仕掛けも出てくるだろう。スマホアプリと組み合わせた情報ツール活用もますます発展すると見込まれる。
テーマパークのライドアトラクションにおいて、さまざまな参加体験を創出し、ますます深い感情移入を可能とするために、五感(視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚)や体感(衝撃、圧力、温度など)をできるだけ幅広く刺激する方向に向かうことは間違いない。そして、利用者から得られる情報に対する双方向性が高められていく。利用者の反応や意向の読み取りは、スマホや専用ツールだけでなく、顔や目線、声、体の動きから、体温、心拍数、血圧、発汗、皮膚電位など、利用者自身から得られる情報の活用可能性は広がっていくことが考えられる。アトラクションのストーリーもひとつではなく、さまざまな条件に応じた異なるストーリーを体験できるようになっていくに違いない。
USJの新アトラクションに続き、2023年度には東京ディズニーシーの新テーマポート「ファンタジースプリングス」に『アナと雪の女王』、『塔の上のラプンツェル』、『ピーター・パン』をテーマにしたエリアと4つの新アトラクションが登場する。これらが、そうした要素を巧みに活かし、新たな魅力を備えていくことを切に願う。