【大河ドラマ光る君へ】凰稀かなめ演じる赤染衛門を紫式部はどう評価したのか?藤原道隆との意外な接点
大河ドラマ「光る君へ」第3回「謎の男」で、元宝塚歌劇団宙組トップスター・凰稀かなめさん演じる赤染衛門(あかぞめえもん)が登場してきました。赤染衛門は、平安時代中期の女流歌人として知られています。赤染衛門は、赤染時用(ときもち)の娘と言われています(衛門という名称は父の官名からとられた)。藤原道長の正室となる源倫子(父は左大臣源雅信、母は藤原穆子)に赤染衛門は女房として仕えるのです。赤染衛門は、儒者で文章博士となる大江匡衡(まさひら)と結ばれ、子の挙周(たかちか)を産むことになります。
紫式部が書いた日記『紫式部日記』には、赤染衛門の名が出てきます。そこには「丹波守(大江匡衡)の北の方(赤染衛門)を、中宮様や殿(藤原道長)などのあたりでは、匡衡衛門と呼んでいる」と書かれているのです。これは、大江匡衡・赤染衛門夫妻の仲睦まじさを現していると言えましょう。紫式部は、赤染衛門を「第一流の歌人というわけではないが」としながらも「風流な心のある人」と評しています。そして「歌人だからと言って、どのような時にも歌を詠み散らすことはしない」「ちょっとした歌でも、こちらが恥じ入るほどの詠み振り」と歌人としての赤染衛門を高く評価しているのです。
さて、赤染衛門の姉か妹に当たる人と、藤原道隆(道長の長兄)は恋仲にあったようです。ある時、道隆が「来る」と言うので、その女性がずっと待っていたのですが、とうとう道隆は通って来ず。そこで、姉妹に頼まれた赤染衛門は和歌を代作するのでした。それが「やすらはでねなまし物をさよ更けてかたぶくまでの月を見しかな」(迷わずに寝てしまえば良かったのに貴方をお待ちして、夜明けが来て、沈むまで月を見ておりました)
(『後拾遺集』)というもの。自分の姉妹の恋人(道隆)をなじる歌を代わりに作ることは、なかなかないことでしょうが、赤染衛門はそうした際にも、機転をきかせて、今にまで残る歌を詠んだのでした。